添い寝だけのはずでしたが
「就寝中で、そのとき添い寝していたメイドが葵を庇って大怪我を負って、葵もしばらく意識不明の重体になったんだけどさ」


 添い寝していたメイド?


 過去にそんな人がいたことも知らなかった……。


「そのメイドのことを、葵はかなり慕ってた。それなのに事故の怪我が回復した後、突然いなくなったらしい。

葵が目覚めた時には、もう連絡のつかない状態になってたんだ。あいつがそのことでしばらく落ち込んでたのを覚えてる」


「そ……うなの?」


「葵の親ってかなり厳しくて、人に甘えることを知らずに育った感じでさ。旅先に同行して添い寝するぐらいだし、唯一心を許せて頼れる存在がそのメイドだったように思う」


 葵さまにも、そんな風に心を許せる人がいたんだ……。


 そんな人が突然いなくなったら、かなり辛かっただろうね。


「あ、寧々ちゃんの事情は葵から聞いてる」


「そうなの!?」


「そ。最近の葵はあれだけど……寧々ちゃんと出会ってから、結構幸せそうに見える。俺が思うに、過去にいなくなったメイドと寧々ちゃんを重ねて見てるのかもな」


 え……どういうこと?


「そうなの?」


「いつも側にいて安心感があって、心を許せて……」


重ねて見ているってことは、過去の辛い経験を私がいることで思い出させている可能性もあるってことだよね。


逆に葵さまを苦しめてるとしたら、こんなに申し訳ないことはない。


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