添い寝だけのはずでしたが
そういえば、葵さまは私になにか伝えようとしていたっけ……。


 俺は……の先に、なにを言おうとしてたの?


 ベッドで静かに横たわる葵さまの表情からはなにも読み取れない。


 このままいつまで続くのかわからないけど、葵さまが目覚めることを一心に祈るばかり……。







 それから数日が経ち、学祭の当日になった。
 

エマちゃんはあのあとから沈黙を守り続けている。
 

私が自分で旧校舎に行ったことになっていて、学校からは公になったら大変な事態になるのでそういうことにしてくれと丸め込まれてしまった。


 渋谷くんに真実を伝えたら激怒していて、エマちゃんに詰め寄っていたけどシラを切り通していた。


 私のスマホは机の中に入っていて、葵さまからの着信が複数回あったことを後で知った。


 もう……葵さまが私に電話をかけてくれることはない。


 メッセージを見ると、今送ってくれたかのような錯覚に陥る。


 毎日見ているのに、病室のベッドで眠ったままの葵さまを想像することができないよ……。



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