添い寝だけのはずでしたが
学祭どころじゃないし休むつもりだったけど、美沙さんからは普段通りの生活を送って欲しいと言われそうしている。


 葵さまのご両親は仕事がかなり忙しいらしく、この件に関してはなにも言ってこないし、面会に一度も現れない。


 美沙さんは仕方がないと言っていたけど、葵さまが瀕死の状態なのにこの対応は冷た過ぎる……。


 そんな親の元で育ち、親身になってくれるメイドを心の拠り所にしていたのは分かる気がする……。


 たとえ業務上の関係であっても、葵さまのそういう存在になれれば……とも思う。


 過去のメイドのことを思い出して辛くなるなら、いなくなる覚悟もできている。


 どうすることが最善なのか、分からない……。
 学祭は、このみちゃんと千咲ちゃんとまわっていた。


 このふたりといると、辛いことが一瞬吹き飛ぶような気がする。


 だけどそれは命を懸けて助けてくれた葵さまに対する裏切りのような気がして、心から楽しむことができない。


 私の顔が浮かないからか、心配してくれたふたりが休憩するように言ってくれた。


 しばらくひとりになりたかったから、有難い……。
 ドリンクを買って校舎裏でひとりで過ごしていたら、誰かがこっちにやって来た。


 またエマちゃんだったらと思うとビクッとして立ち上がると、現れたのは宇治山くんだった。


「こんなところでどうしたの?」


「ちょっと……休憩してるの」


「俺もいいかな」


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