添い寝だけのはずでしたが
え……困る。


 そう思ったけど口には出さなかった。


 宇治山くんに聞きたいことがいくつかある。


 エマちゃんに旧校舎に連れて行かれた日、宇治山くんはどうしていたの?


 宇治山くんのせいとは言わないけど、私がどうなるとも思わずあのまま家に帰ったのかな……。


 確認しても仕方がないんだけど、顔を見ると少し苛立ってしまう。


「色々回った?」


「うん……」


「俺のおすすめは、3年の催しかな。後で一緒に行こうよ」


 どうしてそんなに普通でいられるんだろう……。


 葵さまが意識不明の重体だということは知っているはずだし、私がエマちゃんに連れて行かれたのも見ていたのになんの証言もしてくれなかった。


 クラスで声をかけると、しばらく私から逃げたよね?


 それなのに人気のないところでは話しかけてくるなんて信じられない。


それでもまだ私に好意を持ってくれているとしたら、宇治山くんの人間性を疑ってしまう。


「宇治山くん、他の人と行って。私は……」


「水島のことは辛いと思うけど、寧々ちゃんのせいじゃない。そんなに落ち込まなくていいよ」


私を心配してくれているのは分かるけど、なにかが違うの……。


「…………」


「水島、目を覚まさないんだってな。瓦礫の下敷きになったらさすがに……」


「そんな風に言わないで。葵さまは……絶対に、意識を取り戻すから」


「大丈夫……俺がついてる」


ポンポンと肩を叩かれて、気持ち悪いと思ってしまった。


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