添い寝だけのはずでしたが
この言葉は、次に葵さまに会うときまでとっておきたい。


 宇治山くんに言うのはなにか違うから、押し黙った。


今になって思うのは、かけがえのないあの時間をまた取り戻したい……。


葵さまはいつも上から目線だし、傲慢でわがままで……。


だけど私に向けられていたあの眩しい笑顔や、たまに見せる優しい態度が懐かしくて仕方がない。


例えメイドとしてでもいいから、葵さまの側にいたいって思うの……。


「水島は、寧々ちゃんのことを便利な女だとしか思ってないよ。いつも言いなりだろ」


「そう見えるなら、それでもいいよ。だけど宇治山くんがどう思おうと、葵さまはちょっと不器用なだけで本当はすごく繊細で、優しい人……。


一緒にいるとそのことが分かるし、まだこの先も色んな表情をする葵さまを見ていたいって思うの……」


 そう言うと、宇治山くんがはあっとため息をついた。


「分かったよ。まさかノロけ話を聞かされるとは思わなかった」


「そういうつもりはなくて……」



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