添い寝だけのはずでしたが
「待って。俺のことを水島に話した?」


「ううん……何も……」


「それなら良かった、無駄に怪我するところだった。もう行っていいよ」


 突き飛ばされるように押されて、躓きそうになったところを宇治山くんに支えられる。


「あ……ありがと……」


「ごめん、強くやり過ぎた」


そして、そのままギュっと抱きしめられる。


「やだ……宇治山くん!? 離して」


「最後ぐらいいだろ? もったいぶってこんなに返事を引き延ばしたんだし」


 押し返しても強い力で離してくれない。


「こんなところ、水島に見られたら困るよな。ああだけど、来れないんだったな」


 葵さまがここに現れることは奇跡に近い。


 それにもしこの状態を見ても、ただのメイドが誰と恋愛しようが何も気にしないはず。


 腕をがっちり捉えて、薄笑いをしている宇治山くんがとてつもなく怖い。 


それに……葵さま以外の人に触れられるのが、もの凄く嫌。


「やめてっ」


 離してくれないし暴れて大声をあげようかと思っていたら、私たちの方へ誰かが歩いてきた。


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