添い寝だけのはずでしたが
全否定するつもりで顔を横に振ると、うんうんと何度も頷いている。


「それならよかった、葵もまだなのにな。先越されるとか可哀想過ぎるだろ」


「あっ、葵さまが? もしそうだとしても……きっと、なにも思わないよ……」


 そう言ったら、渋谷くんが苦笑している。


「そうか。それなら……今から俺とデートして、生死を彷徨ってる葵に見せつけよう。多分、地獄からも這い上がってくるはず」


「そ、それは……」


 それで葵さまが目覚めるなら、どれだけいいか。


「寧々ちゃん、転校の手続きを取ろうとしてるって本当?」


「あ……」


 実は、一度葵さまから離れた方がいいのかと思い、今からでも転校できる学校があるか先生に相談したんだよね。


 そのことを聞いたのかな……。


 まだ実行には移せていないし、葵さまが目覚めるまではここで過ごしたいと思っている。


「どうして?」


 顔を覗き込まれて、俯いてしまう。


「それは……」


「ごめん、俺が余計なこと言ったからかな。過去の地震は葵にとってトラウマだろうけど、寧々ちゃんを助けられていなかったら今もっと苦しんでたはず。寧々ちゃんが無事なこと、それが葵の本望じゃないかな……」


「葵さまをあんな目に遭わせてまで……助かりたくなかった……。私のせいで、葵さまは……」


 地面に崩れ落ちそうになったところを、渋谷くんに支えられた。

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