添い寝だけのはずでしたが
「俺たちは……待つことしかできないけど、葵が目覚めた時に最善の環境を揃えていよう。そのために寧々ちゃんは、最高のメイドになること」


「え……」


 渋谷くんは、私と葵さまの関係を知っていたの!?
 まあ、ふたりは仲がいいから話しているのも当然だよね。


「知ってたんだ……」


「聞いたのは最近だけどね、葵が俺に隠し事するって珍しいから。メイドだって知れたら学園に居づらいだろ。

そういうことが分かってて俺にも話さなかった。葵ってそういうやつだよ。一見冷たいけど、側にいてくれる寧々ちゃんのことを守りたかったんだろうな」


 友達ができなくなったら困るだろ、とは言っていたけど、そこまでの気遣いをしてくれていたなんて……。


 だけど今なら分かる、葵さまって不器用だから優しさが分かりにくいんだよね。


「うん……そうだね」


「だからさ、学園を去るとか考えないこと! ずっと葵の側にいてやってくれよな」


「そう……かな。いいのかな……」


「葵の気持ちを代弁する。あいつならきっと、勝手に俺の側を離れるなって何度言ったら分かるんだよって言うよな」


 まるで葵さまの口調で、懐かしさと共に会えない切なさで涙が零れそうになる。


 だけど久しぶりに声を聞けたような錯覚に陥って、嬉しいようななんだか不思議な気分……。


ノッてきたのか、渋谷くんが饒舌になる。


「こうも言うだろうな、俺がいない間に寧々になにかしてないだろうなって」


「そ、そうかな……」


「言われ損じゃね? こんなにフォローしてるのにな」


「ふふっ」


< 212 / 248 >

この作品をシェア

pagetop