添い寝だけのはずでしたが
「渋谷くんから聞いたの……以前、地震に遭ったこと。それと、そのときのメイドさんが突然いなくなったことも……」


 辛いことを思い出させてしまうかもしれない。


 それでもこれからきちんと向かい合うためにも、話し合っておきたい。


「ああ……そのことだけど、俺もずっと忘れてたな……。いや、心のどこかでずっと引っかかってた。唯一信頼していた人で……突然いなくなって、裏切られたような気になってた。

本当は父親が解雇したんだろうけど、真実を知るのが怖くてそれを確かめることすらできなかった。今思えばその頃から、うなされるようになった気がする」


「そうだったんだ……」


「そのことと、寧々のことは別問題だ。責任を感じてメイドを辞めようとする動きがあるって、美沙が言ってたけど本当か?」


 美沙さんは……気付いていたんだ。


「まだ……考え中で……」


「勝手に決めるなよ。決定権は俺にある」


 ……ですよねえ。


 分かってはいたけど、面と向かって言われてしまうと苦笑するしかない。


 そう言うってことは、辞めなくてもいいのかな……。


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