添い寝だけのはずでしたが
一番奥の席に着くと、あっという間に人に取り囲まれた。


周りは全員男子生徒で、居づらくて仕方がない。


「何か適当に持って来てくれ」
 

気を利かせてくれたのかどうか、葵さまにそう言われて立ち上がる。
 

何が好きなのか分からないけど、とりあえず選んでお皿に乗せていると、後ろから誰かにぶつかられた。


謝ってはくれたけど、その子が手にしていたジュースが制服にかかってしまった。


「どうしよう! そうだ、着替えを持ってるから使う?」
 

大きな瞳で、私を真っすぐに見つめてくる。


セミロングの茶色くて柔らかそうな髪が、ふわりと揺れた。


目がくりっと大きくて、鈴を転がすようにクスクスと笑うと、口角が綺麗な形で三日月になる。


うわあ、すっごくかわいい子!


「ううん。すぐ乾くと思うし、このままでいいよ」


「そんなこと言わないで? 一緒に来て」
 

強引に引っ張られ、別館の裏手にあるロッカー室へ連れて来られた。


「ここで着替えてね」


「ありがとう」
 

その子は外にいると言って、ドアを閉めた。


すごく親切な人。
 

着替えている間、葵さまに何も言わずに来たことが気にかかる。
 

急いで部屋を出ようとすると、鍵がかかっていることに気がついた。
 

あれ……。


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