添い寝だけのはずでしたが
目を覚まして驚いた。
 

ここは……家の中?
 

ふかふかの大きなベッド、いい匂いのシーツ……見渡すと本当に広い部屋で、まだ夢の中にいるかのよう……。
 

ハッとして起き上がると、そこは葵さまの部屋だった。


「急に起きるなよ」
 

不機嫌そうな葵さまが枕元に座っていて、ゆっくりと押し戻された。


「私……どうしてここに……」


「覚えてないのか。教室で倒れた」


「え……」
 

ふらついたとき、誰かに抱えられたような気がするけど……。
 

葵さまが受け止めてくれたの?


「それまでどこにいた……俺と一緒にいるのが嫌ならそう言えよ」
 

今まで見たことないほど困った表情で、私を見つめている。
 

これは怒っているというより、心配してくれているように見える。


「心配かけてごめんなさい……葵さまの思っているようなことじゃなくて、料理を取りに行って、人とぶつかって制服が汚れたの。それで別の場所で着替えていたら、ドアが開かなくなって……」


「は? もっとまともな言い訳しろよ」
 

元々信頼関係もないし、信じてもらえなくても仕方がないよね。
 

葵さまは完全に呆れている。



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