添い寝だけのはずでしたが
「また会ったね」


それは、宇治山くん。


優し気で、にこやかな笑顔にホッとする。


宇治山くんはそういう包み込むような優しい雰囲気を持っている。


「そういえば、クラスですごい騒ぎだった。水島の彼女って本当?」
 

違います……とも言えず、口ごもってしまう。


「事情がありそうだね。女性を見下している水島に彼女がいるって信じられないなと思って」
 

見下している……確かに……。
 

何て答えていいのか分からず笑ったつもりだけど、きっと苦笑いになっているはず。


何も言えないでいたら、宇治山くんがロッカー室を指差す。


「俺、放送部なんだけどさ。ナレーションの練習をしようと思って……人がいないし、実は一昨日それでロッカー室に行ったんだよね」


「そうだったの!?」


「中にいるときは念のためドアにストッパーを挟むんだけど。まさか外から鍵をかけるやつがいるなんて。初めて知ってゾッとした」


そっか……あのとき、外から鍵がかかってたんだ……。

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