添い寝だけのはずでしたが
「水島が? エマに優しくするのは、ちょっと信じられないな……」


 そう言って、このみちゃんをジロリと睨む。


 そうそう……学園で葵さまのことを名字で呼ぶ女子は、千咲ちゃんが初めて。


 物事を客観的に見ている風に見えるし、口数が少ないこともあってたまに言う言葉には重みがある。


「エマって性格悪いのに、顔がかわいいから男はすぐ騙されるよね。水島はそういうのとは無縁だと思ってたけど……それ、本当なの?」


 千咲ちゃんは相変わらず冷ややかな視線を送っていて、それを受けてこのみちゃんは更に興奮して立ち上がる。


「見たから言ってるの! 文句ある?」


「なんか嘘くさいんだよね……エマの口から出るのって自慢話ばっかりだし、親が芸能プロダクションの代表でそれ関連の話をよく耳にするけど、興味ない人からしたらうんざりだよ。

まず会話が広がらないし、水島が相手にする姿が全く想像つかない」


 珍しく饒舌な千咲ちゃんに、このみちゃんが食ってかかる。


「エマちゃんの悪口言わないで」


「ふん」


「ふたりとも、落ち着こうよ」


 しばらくふたりの睨み合いは続いて、険悪な雰囲気の中どうしようかと思うものの、私も別のことで動揺している。


 葵さまがエマちゃんを部屋に連れて入ったって、本当なのかな……。


千咲ちゃんの言うように、葵さまがエマちゃんと親密になるのはちょっと信じられない。


そうは言っても、このみちゃんが嘘をついてるとも思えないし……。


 もし本当なら、部屋に入って何を話していたの?


部屋にふたりっきりだったら……ううん、他の人がいたかもしれない。


 私には関係ないんだから、これ以上考えるのはやめよう……。


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