Dying music 〜音楽を染め上げろ〜




「おかえり~!大丈夫だった?」


家に着くと、お母さんがタオルを持って玄関まできていた。幸い、こちらの地域は停電はしていなかった。


「お邪魔しまーす!」


後に涼たちが続く。師匠は僕たちを降ろすとすぐに出発してしまった。


「みんなこれ使って。」


蓮や麗華ねぇも手伝う。楽器類は無事。濡れたのはケースだけだった。でも僕らが無事なわけない。

涼は背が高いから濡れる面積が人より広いんだ。頭からつま先まで雨水滴ってる。怜斗は髪がペチャンコ。恭也はさっき水溜まりにやられたから足元壊滅。頭を拭きながら周りを見る。



あれ、雄大さん……………



いつも出迎えてくれる雄大さんの姿が見当たらない。


「雄大さんは?」

「雄大さんね、帰ってこれなくなっちゃったのよ。会社に泊まるらしいわ。」


そうなんだ。思っていたより大変だな。全員シャワーを浴びたら着替えて夕飯。こいつらの着替えは蓮と勝手に雄大さんのものを拝借した。


―「現在、神奈川県、東京都など関東全域に大雨特別警報がー」



状況がテレビに映し出されている。家に帰っても暴風雨はおさまる様子はない。明日には回復してくれるといいんだけれどな。そんなことを思いながらサラダを口に運ぶ。そんなことより、


「みんなたくさん食べてねー!」


家にこの3人がいるって変なの。しかもいい感じに馴染んでいるのはなぜ?蓮もすぐに仲良くなっているし。いつもより賑やかな食卓。


「さっき蓮さんからも聞いたけれど、シェアハウスってすげぇな!」


この家、元々はお母さんと2人で住んでいたんだけれど、学生限定で入居者を募集したんだ。そこで集まったのが雄大さん、麗華ねぇ、蓮の3人。雄大さんと麗華ねぇはお盆や年始末は帰省している。蓮は両親が海外で、帰ってこれる日が限られているから大体はこっちにいる。


「どういう成り行きでシェアハウスすることになったんですか?」


恭也がみんなに聞いた。


「ウチのお母さんが美奈子さんと知り合いでね。こっちの大学に通うためにここにしたの。アパートとかも考えたんだけど、やっぱり知っている人がいる方が安心するなぁって思ってさ。」


麗華ねぇのお母さんと俺のお母さんは会社の同僚。麗華ねぇとは小さい頃に何度か会っていて顔見知りだった。頭もいいしおしゃれだし、僕にとって姉みたいな人。


「俺は中3のときから両親が海外で働いているんだ。一人暮らしは無理だし、親戚の家も遠いからここにした。」


蓮がここに来たのは2年前。スポーツが得意だから色々教えてもらったな。今では勝手に部屋入って来るからたまにケンカになる。朝に大声で歌いながら起こしてくるのは本当にやめてほしい。


「あと一人、雄大さんって人がいる。」


雄大さんは大学生の頃からここにいる。本当は就職したら引っ越す予定だったんだけど、タイミング逃してやめたんだ。ちょっと会社からは遠いけれど、ここから通勤している。


「なんか楽しそう!」

「慣れるとそうでもないぜ?食当はめんどくさいし、誰かさんは風呂長いし。」



ちょっと―!っと麗華ねぇが頬を膨らます。風呂が長いのは麗華ねぇ。長風呂だからのぼせていないかお母さんがよく生存確認しに行ってる。


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