Dying music 〜音楽を染め上げろ〜



「お邪魔しま~す!」


ぞろぞろと夏樹の部屋に入る。


「え?何そのお菓子。」

「夏樹のお母さんがお茶とお菓子出してくれた。」


部屋を片付けているあいだ、夏樹のお母さんが用意してくれた。「仲良くしてくれてありがとう。」って。夏樹はミニテーブルを出すとその上にお盆を置いた。

ぐるりと部屋全体を見渡す。

壁一面に防音材が敷き詰めてあって、壁側にはギターが4本も。全部青色だ。棚には学校の教科書の他に音楽に関する書籍やギターの教本もある。ラウンドのポスターやアルバムも飾ってる。すごい。ミュージシャンの部屋だ。


「そんなにまじまじと見るなよ。」


夏樹に言われる。



「すげぇなって思ってさ。いつもここで練習してんの?」

「うん。練習は大体家でやる。ガッツリ弾きたいときはMidnight行く。」

「ギター4本もあるんだな。」

「アコギとレスポール、テレキャス。いつも使っているのはストラト。」



ギターと一括りにいっても多くの種類があってそれぞれ音色や合う曲も違う。夏樹の使っているテレキャスターという種類はパキっとしたサウンドで高音が綺麗に出る。ソロでも目立つし、リズムギターなんかにも最適だ。


「レスポール持っていたんだな。」


恭也が聞いた。恭也はレスポ―ルというエレキギターを使っている。パワフルなサウンドが特徴的で、ロックやハードロックの曲に合う音を奏でる。


「持っているけれど、頻繁に使うほどではないかな。バンドさんのサポートで入るとき使う。」


そういえば夏樹がストラト以外弾いているのは見たことないな。


「んで、軽音トークって何話すの?」


お菓子の袋を開けながら聞いてきた。



「おぁ~夏樹からノッてきた!何話す?恋バナ?将来のこと語っちゃう?何なら黒歴史暴露大会でもいいぜww」



怜斗がノリノリではしゃぐ。黒歴史って……そういうのは話すものじゃないだろ。



「じゃあ俺から~!みんなのぉ~初恋はぁ~?」


「「「気持ち悪」」」


涼の上目遣いと作った声色に全員がそう言った。



「うっせぇ!ほらお前からだぞ!」



涼は強引に怜斗に話を振った。


「俺ぇ?初恋自体は小学生のときくらいじゃなかったかな?」

「怜斗は中学のとき彼女いたしな。」

「いたんだ。」



夏樹がお菓子を食べる手を止めて怜斗を見た。


「1年くらいで別れたけどね。ほら、俺は言ったぞ!次は恭也!」


恥ずかしさを隠すように恭也の肩を叩く。



「痛いって!……初恋はまだ。」

「つまんなぁ~。じゃあタイプは?」

涼が口をへの字にする。

「しいていうなら年下。」

「うわ~……」



その答えに夏樹がわかりやすく身体を引いた。


「夏樹がガチめに引いてるw」

「悪い?」



その反応を見てムスッとする恭也。


「アンタが年下とか、何を色々教え込むんだろうなって。」


夏樹の発言に涼と怜斗が「あぁ~」っと共感の声をあげた。



「それは分かるかも。その子も恭也と付き合うにつれてファッションとか系統変わっていきそうw」

「お前ww、少女漫画の見過ぎwwアハハッw」

「うわぁ~……」



大笑いする涼と怜斗、さっきよりも引く夏樹。


「お前ら俺のことなんだと思ってんだよ?」


次、涼。と順に回って来る。



「俺は中2のとき。吹奏楽部の子でめっちゃ優しかったの!」



意外と最近だね、と夏樹が言う。



「コイツ告るか告らないかで迷っていたら先輩に取られたんだよww」

「そ、れ、は!しようがないだろーがよ!」



恭也のからかいに涼はコップを持ったまま立ち上がった。ぴちゃっとお茶がこぼれそうになる。


「危っね!」

「ちょっと人の部屋でお茶こぼさないで⁉」



< 106 / 191 >

この作品をシェア

pagetop