Dying music 〜音楽を染め上げろ〜
「ラスト、夏樹!」
涼を落ち着かせると話題が回ってきた。
「まだ人好きになったことない。」
これ恥ずかしいから嘘ついているってわけじゃない。本当だからな?
「夏樹って女子にモテそう。」
恭也が言った。
「クラスでも女子からかっこいいってよく言われてるぜ。」
涼の言葉に僕は
「背とかでしょ。かっこいいとか思わないよ。」
そう否定する。一応クラスの中では一番背が高い。でも学年では僕より高い子もいるし。
「女子から告られたことはあんの?」
怜斗が聞いてくる。踏み込んでくるねぇ~。
「ある。でも付き合ったことは男性も女性もないよ。」
中学生の時に1回だけ告白されたことがある。でも、特別好意を抱いていたわけじゃなかったからその先に進むってことはなかった。正直、恋愛に関してはよく考えたことがないな。「憧れ」の好きと「恋」の好きは別物だし。
「へぇ。ちなみにタイプは?」
「…よくわかんない。好きになった人がタイプみたいな感じ。」
「夏樹っぽいなぁ~」
どういうことだよ、僕っぽいって。でも何だろ、年上年下関係なく自分が甘えられるような人がいいんだよな。ていうか…
「こんなふうに誰かと恋バナしたの初めてかも。」
彩音や色葉とも趣味の話やテレビに出ているアイドルの話はしたことはあっても、こんなにお互いのタイプを言ったり、過去の恋愛の話をするって機会はなかった。
「ゆーて俺らもこんなに話したのは久しぶりじゃない?」
怜斗が涼たちに聞いた。
「そうだね。涼の失恋以来かも(笑)」
「おい、その話掘り返すな!」
「♪失恋のぉ~痛みはぁ~」
恭也のいじりに涼が反応する。便乗して失恋ソングをぶっ込む怜斗。お菓子を広げて、好きな話して夜遅くまで起きている……修学旅行みたい。
「あははっ」
おかしくなって笑ってしまった。その様子を見た3人が驚いてこちらを見る。
「ど、どうした夏樹?」
「今の何かツボる箇所あった?」
「頭のネジ外れた?」
その戸惑う様子にさらにお腹がよじれた。どうしよう、笑いが止まらない。
「あー、ごめんごめん。」
笑うだけ笑ってお茶を一口飲んだ。
「ちょっと楽しくって。」
だって面白いんだもん。
みんなふざけてさ。カオスじゃん。
深夜テンション入ってんのかな。
こんなに笑ったの久しぶりかも。
笑いすぎてみぞおちが痛いくらい。
「夏樹が楽しいってよ~!(笑)」
涼がニヤニヤしながら言う。