Dying music 〜音楽を染め上げろ〜

帰り道、みんなでいつものコンビニに行く。


「俺コンソメチキンー！お前らは？」

「俺は今日唐揚げの気分～」



みんなで話しているときはほんの少しだけスランプを忘れられるんだ。先に会計を済ませて外で待つ。



「何買ったの。」



先に待っていた恭也に聞く。


「チョコミルクレープ。」


また甘いのか。飽きねえのな。


「病気になるぞ。」

「毎日食っているわけじゃないんだよ。」



毎日食っていなくても糖分を摂取のし過ぎると健康に悪いだろ。糖尿病とかよ。僕も袋の中からワッフルを取り出して口に入れた。美味しい。パクパクと食べる。



「………なぁ。」



恭也が声をかけてきた。



「どうした？」



食べるのをやめて恭也の方を向いた。












「………いや、別に。」
















特に何もねぇのかよ。


…最近恭也はなんか変だ。ギターで苦戦しているのか口数がいつもより少なくなってる。

それに距離感？みたいなものもおかしいような気も。

元々コイツとは日常でもそこまで深く話さない。

でも近頃はいつもと違う視線を感じるっていうか。





……気のせいか。





「おまたせ～。って２人とももう食ってんのかよ。」

「遅いんだよ。待ちくたびれた。」



そこから分かれ道まで一緒に帰る。




「そういえば、Cyan動画上げていたぜ。」




涼が話し出す。


またこの話題。


心臓がきゅっとなる。



「俺まだ聞いていないんだよな～。曲名は？」

「『シャウト』。今回はマジですごかった。表現力エグくて泣いちゃった。」




今週、動画を上げた。曲は「シャウト」これを録ったのは夏合宿の前、コードとのバトルに負けた直後。悔しくて、自分の力量にムカついた。その感情をまんま込めて歌ったらいいのができた。



「恭也は聞いた？」

「…あ、…うん。」

「叫ぶところヤバくなかった？」



叫ぶ？あ、「限界だ」ってところか。原曲だと「限界だー……」って音が沈む感じなんだけれど自分の解釈で変えたんだ。曲の中の主人公になりきったとき、ここまで気持ち落とされたときの絶望感って「意気消沈」って言葉よりも「狂乱」って言葉の方が合う気がして。何もできなくなって精神狂う、みたいな。だから叫んだ。コメント欄でも講評だったから変えて正解だったな。


でも、調子悪い今は聞きたくなかったな。



「ね、ねぇ、来週から週３練習にするんだっけ？」




Cyanの話を遮りつつ、予定を確認した。



「うん。内田先生からも許可貰った。」



追い込みをかけるために、来週から文化祭まで水曜日を加えた週３活動にした。

コックピットや通しの練習、そしてギターソロの合わせも。たくさんしないと。