Dying music 〜音楽を染め上げろ〜








…何でこの人に言われると何でも納得しちゃうんだろう。



話がロジカルだからかな。前のバトルのときもそうだけれど、言葉選びや考え方がちゃんと筋通っているっていうか。やっぱり年上なんだなって感じる。



「アンタってアドバイスだけは適切ですよね。」

「だけって何、だけって。これでも結構真剣に考えたんだけど?」

「ありがとうございます。……何となく、どうすればいいのか分かった気がする。」




その言葉を聞くとコードは「ならよかった。」と笑った。それから、



「にしてもイマドキ高校生がガチ喧嘩とかウケるw」


ククッと笑ってきた。


「笑い事じゃないんですよ。」


ウケるだ?全然ウケないよ。文化祭直前でこれだ。雰囲気エグイ悪いし責任感と後悔で胸がいっぱいだよ。Cyanのことだってこれからどう話すのか全然決めていないんだ。



「泣くか?wまた胸貸そうか?w」



また?胸貸す?






「またって何ですか?」



意味が分からずそう聞く。



「覚えてねぇの?お前、うわーんって泣きついて来たんだよ?コードさーんって。」




だ、抱きついたっ⁉こいつに⁉



…あぁぁ~ぁ…。




顔が熱くなるのが自分でも分かった。学校から飛び出したあたりだよな。そこら辺の記憶ほとんど抜けてんだけど、絶対顔ぐしゃぐしゃだっただろ。あんな不細工な泣き顔見られたってことでしょ。



「最っ悪…‼」


恥ずかしすぎる。コイツ記憶トばしてくんねぇなかな。一発頭殴ったら記憶消える⁇そんな都合のいいことあるあわけないか。頭を抱えてテーブルの上に突っ伏した。それを見たコードの笑い声が大きくなる。


「笑わないでくださいよっ!」


恥ずかしくて少しキレ気味にコードに言う。あー、本当にこの人何なんだよ。頭いいのか、ただの煽りキャラなのか分かんない。



…でも、ちょっとは心の整理ができたかも。落ち着いたし。



「やっぱり帰ります。もう遅いし、うちの人も心配するんで。」


制服をカバンに入れて帰り支度を始めた。服は洗って今度会ったときに返そう。



「あの、今日は本当にありがとうございました。夕飯も頂いちゃって。」



玄関先でそう頭を下げる。



「全然Cyanと話してこっちもいいリフレッシュになったよ。」

「リフレッシュ?」


首を傾げると、コードは「ちゃんと言っていなかったね」と笑った。


「俺今受験期なんだ。来月に推薦入試があってね。だからマスターのところも録音も今はストップしてる。今年中に決まれば年明けから再開できるんだけど~…落ちたら4月までかかるかな。」



受験。


最近コードの投稿頻度が落ちていた理由ってこのことだったのか。学校でも3年生が模試とかで放課後残っている姿をよく見かける。

てことは、今一番大事な時期。

そんな中で僕、自分のことで精一杯で。

気づかないうちにコードの時間奪ってた。



「すみません、大事な時期に…」



咄嗟に謝った。


「だから俺にとってこれはリフレッシュになっているんだって。迷惑かけた、とか思わなくていい。まぁしばらくはちゃんと会えないからね。終わったら連絡するよ。」

「頑張ってください。」

「ありがと。じゃあ、気を付けてね。」



コードに相談してよかった。




ひどいこと言ったこと謝りたい。

またセッションしたい。

それから涼と怜斗にも迷惑かけたこと謝りたい。

みんなとバンドしたいし、文化祭も出たい。






音楽と一緒。


自分の想いを届ければいいんだ。
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