Dying music 〜音楽を染め上げろ〜
そして感じた違和感。
8月の最終週にCyanが歌ってみたを投稿した。曲名は「カラクリ時計」。
見たとき、固まった。
時間も曲名も、あの日夏樹の部屋で見た紙の内容と一致していたからだ。
でも、歌声はいつもと同じ、俺が知っているCyanの声だ。
「…まさか、な。」
だってCyanだぞ。注目されている、新星ともいわれているような歌い手だぞ。確かに夏樹は、音楽に関しては頭一つ抜けている。テクニックだって申し分ないし、アレンジもその場で考える。ただ、他の楽器はやったことがあっても、アイツはギターが本業。歌うなんてありえない。そう思っていた。
つい、この間までは。
9月に「シャウト」が投稿された。
前回と動揺、曲名も時間も夏樹の部屋にあったものと同じ。そのとき頭に浮かんだのは、
夏樹がCyanなんじゃないかってこと。
だって2回も連続でドンピシャ当たるか?よく聞くと曲中の笑い声なんかも似ている感じもする。
…でもまだ決まったわけじゃない。俺の勘違いかもしれない。
練習終わり、コンビニで2人になることがあった。
「なぁ、」
「どうした?」
―「お前って動画投稿とかしてる?」
聞けなかった。
その先は、踏み込んではいけないような気がした。
目には見えないけれど、
立ち入り禁止のテープが張ってあるようで。
違う世界なんじゃないかって。