Dying music 〜音楽を染め上げろ〜


----……………………





「……クッソ、」


イライラする。コックピットのギターパートは俺。複雑なコード変換を素早くしなければならない。ハッキリ、的確に音を鳴らす必要があるのに、指の移動がスムーズにできなくて途切れる。

それから、夏樹とのラスト。合わせようと提案したのは俺だ。その方が音色が重なっていいと思ったから。それが全然合わない。



正確に言うと、俺が合わない。



夏樹はいつもできるんだ。間違えることもあるけれどそれはほんの少しだけ。大抵は俺がミスって止まる。何とか成功したときも、俺は手が攣りそうでブルブルしているに、アイツは涼しい顔して弾き終える。必死さが皆無なんだ。




「僕はミスんないよ。」




この言葉を言われたときはすげぇイラついた。

分かってる。

圧倒的センスと練習量と努力。

夏樹と俺は違う。

それは知ってる。敵わないと思う。

けど悔しい。





あの日、自分のギターの技量、夏樹に対して抱いていたちょっとした不信感、羨ましい、妬ましい、尊敬、嫉妬、自分への怒り、焦り、不安。心に閉まっていた色んな感情が流れ出てしまったんだ。


手なんか一ミリも、一秒も抜いていない。血管千切れるくらい集中して弾いてる。手抜くなって言われたとき、頭の中の何かがキレて勝手に手が出た。




「お前がCyanなんだろ」






勢いでそう叫んだ。

マジで後悔している。

地雷踏んだなって。

あれはみんなの前で言っちゃいけなかった。

口にのりつけてでも言ってはいけなかった。

でも、

夏樹と面と向かって話す度胸もなかった。

誰かに頼むことも小さなプライドが邪魔してできなかった。

そんなものポッキリ折っちまえばよかったのに。

涼と怜斗にも迷惑かけた。

夏樹にもひどいことした。

手、出した。





最低だ。


< 137 / 191 >

この作品をシェア

pagetop