Dying music 〜音楽を染め上げろ〜
え。
先に恭也が口を開いた。
「今から話すこと無視してもいいから。」
一呼吸置くと恭也は話しだした。
「お前が羨ましかった。大人でも難しい曲をサラって弾けたり、とんでもない演奏ができたり。同じ年なのに、同じギターなのに、どんなに練習しても俺にはできなかったから。知らないうちに嫉妬してた。コックピットも提案した俺がお前の足引っ張ってる。焦ってイラついてた。」
恭也は少しずつ、ゆっくりと話した。いつもの上から目線のような口調ではなく、落ち着いた声。そして最後に、
「小さい頃から一生懸命やってきた努力の結果が、今の夏樹なんだよな。その過程を貶して悪かった。ごめん。」
そう言った。
恭也の口から出た言葉。
謝罪と本音。
その言葉に俺は恭也の方を見て言った。
「こっちもごめん。僕、……その、スランプだったんだ。どんどん悪くなることが怖くてムカついて。恭也に、置いて行かれる気がして…。気づいたら当たってた。人格を否定するような、酷いこと言ってごめん。」
言いたいことはこれだけじゃない。
「恭也とギターの話したり好きなアーティストの話するの楽しいんだ。周りに同世代がいなかったから余計に。それから、………………僕はこれからも一緒にバンドしたい。」
これが正直な気持ち。
顔をあげると恭也と目が合った。
やっと、やっと見れた。
「俺もだよ。みんなと演奏することは楽しい。…もちろん、夏樹とも。」
その言葉を聞いて心の中の重い鎖が外れた感覚がした。
よかった。
ちゃんと言えた。
謝れた。
よかった。
「……あのとき怪我とかしなかったか?後ろ、倒れたとき。」
恭也が心配そうにそう聞いてくる。
「全然、何ともない。そっちは?お腹蹴っちゃった。」
「痣できた。」
「えっ、」
「嘘。そんなヤワじゃないから大丈夫だ。」