Dying music 〜音楽を染め上げろ〜
「やべぇ………」
涼も怜斗も恭也も夢中でステージを見た。初めて聞く、夏樹の本気。
音を操っている。夏樹の周りだけ、違う。
表現に迷いや躊躇が一切ない。
ここで入れるかって箇所でアレンジをぶち込む度胸。
ハーモニクスもタッピングもオクターブ奏法も、すべての音が美しくて力強い。
パワーコードなんて痺れるくらいのかっこよさだ。
鼓膜をぶち破りにくるような、心臓を無理やりこじ開けてくるような音圧と歌声、表現。
たった、4分程度の曲なのに。
かっこいい。
そんな言葉では足りない。
目が離せないほど惹き込まれるパフォーマンス。
「Cyan―――――‼」
「Cyan~~‼いいぞぉぁ~~!」
「Cyan!」
最高だ。3人とも周りの目を気にせず名前を叫んだ。仮面の上からでもしっかり分かる。夏樹が顔をくしゃっとさせて笑っているんだ。心の底から音楽を愛していて、楽しんでいて。
身体の一部のようにギターが叫んでいる。
湿度の高めな声質だが、低音のハスキーさが力強さを出している。決して弱々しい歌声ではない。はっきり聞き取れる滑舌、リズム感。
夏樹が築き上げてきた賜物。
夏樹にとって音楽は人生そのものなんだ。
たった16歳で、覚悟を決めているようなその歌声と演奏にその場にいた全員が心を奪われた。