Dying music 〜音楽を染め上げろ〜
すぐにAスタに戻った。持ってきた服に着替える。足元をスニーカーからシークレットブーツに履き替える。これ身長盛れるんだよ。そしたらメイクを少し直す。リップ塗りなおして、アイシャドウも追加。お、今日はグラデーション上手くいった。まぁ、どっちみち顔見えないんだけど、気合入れたいからメイクは毎回するんだよね。……よし、完成。
「やるか。」
ギターを手に取って練習開始。今日は初めてする曲もあるから念入りにするか。
♪♬~♩♪♬~--
喉のウォームアップも念入りに。うん、いいね。喉も開いてるし微調整すれば良さそう。ステージ、たしかスタンドマイク新しいものに変えたから高さ調整しろって言ってたっけ。
かちゃ。
出番数分前、師匠が入ってきた。
「出番だ。」
「はい。」
特製の仮面をつけて、フードを被った。そしてステージ裏で待機する。
……そろそろいつものやつ、やろうか。
僕はこのステージに立つ前、いつもルーティーンをするんだ。深呼吸をしたあと、目を閉じて拳を心臓の上に軽く当てて唱える。
「思いを届けろ、歌を届けろ、音楽を――」
「自分色に染めあげろ。」
……目を開けるとそこにいるのは如月夏樹でも、Midnightのナツでもない。今から僕は、
歌い手、Cyanになる。