Dying music 〜音楽を染め上げろ〜





多目的小ルームからは既に楽器の音が鳴り響いている。


「うわっ!」


扉を開けると怜斗が突っ込んできた。そしてそのまま


「夏樹、通知表どうだった⁉学年何位⁈」


前のめりになって聞いてくる。


「な、なんで、」

「いーから!何位⁉」

「……61位。」



その数字を聞くと怜斗が背中を思いっ切りのけぞった。よく見ると手には通知表が。


「あぁぁ~~!負けたぁ!つーか涼よりも断然たけぇし!」


怜斗の通知表を受け取って見る。評定が古典と現文は4か。んーと、数Ⅰ数Aが2…。ギリギリだな。体育と音楽は5。残りの科目は全部3だ。学年順位は…あー、成績僕らの中で一番下だったのか。だからあんなウダウダしてんのな。


「最終的に赤点なかったんだからいいじゃん。」


そう返す。コイツ学年末でも英語と数学赤点取ったから進級できるのか全員でヒヤヒヤしていたんだよ。


「俺が一番バカなのかよぉぉ~…」

「じゃあもっと計画的に勉強すればよかっただろ。」

「ほらみんなやるぞ!新学期始まってすぐに新歓あるんだから!後輩Getするんだよ!」



うっせぇなぁ……。騒ぐ3人を続ける怜斗を横目に自分の楽器を準備する。この騒がしさにも慣れたもんだよ。というか、自分の耳が慣れたことに驚きすらもある。シールドを繋いでチューナーも用意。

ありがたいことに、軽音楽部は新入生歓迎会で1曲フルで演奏させてもらえることになった。コックピットの再演をすることにしていて、春休みはその練習だ。




文化祭の後も色々あったんだよ。軽音楽部の名が知れて、演奏を見ていた先生が軽音楽部の次年度予算あげてくれた。もしかしたら今よりももっといい環境でできるかもしれないね。


冬休みはコードとご飯行った。無事、推薦入試に合格して春から大学生だって。動画の作り方とかアーティストの話だとか、音楽の話たくさんした。実はバトルにもリベンジしたんだ。今度は決勝負け。もちろん相手はコード。ヘラヘラしていても実力はあるモンだから余計ムカつく。楽しかったけど。


3学期は軽音楽部でセッション大会したな。即興で合わせるやつ。内田先生も呼んで楽器体験してもらった。ギターはボロボロだったけれど案外ベースができていてびっくり。涼が「今度一緒に出ませんか!」って誘っていたけど、普通に断られていた。


2月にはバレンタインってことでチョコブラウニー作ってみんなに渡した.色葉と彩音にもね。チョコ作るのなんて久しぶりすぎたけどみんな美味しいって言ってくれた。


< 185 / 190 >

この作品をシェア

pagetop