Dying music 〜音楽を染め上げろ〜




「あー美味しかった!」

「涼食いすぎなんだよ。」



3人はさっきまでファミレスで夕飯を食べていた。そんで今は駅に向かっている途中。

あれから何度も勧誘した。何回行っても返ってくる言葉は「入らない」「興味ない。」前回なんかついに「もう来るんじゃねぇ。」ってマジトーンで吐き捨てられた。あーぁ、やっぱり無理かな~。

彼が入ると、絶対に安定したバンドになると思うんだよな。構成的にってよりかは音の安定。ギターだってリードとリズムのツインギターにできるし。それに……………これはあくまで一考えだけど。


あの音は単体ではその良さを最大限発揮できていない気がする。








すると急に怜斗が足を止めた。


「どうした?」

「あれ……………あれ如月くんだ!俺が前見たギターケースと一緒!」



そう興奮気味に指をさした。よくよく顔を見てみる。……間違いない。如月くんだ。



「行こう。」

「お前マジかよ!?そっち南口だぞ!?」



恭也が焦って止める。南口、もちろん高校生にとって行くのは好ましくない場所だ。しかし、このチャンスを逃すものか。


「いいから!」


追いかけて南口を出た。人通りが多い通りの両端には居酒屋やバー、おまけにキャバクラとホストクラブ。夜とは思えない明るさに目がチカチカする。プラカードを持ったキャッチを断りながら如月くんのあとをつける。


(一体、どこに行くんだ)


2,3分後、大通りを外れ、狭い路地に入った。


せっま……。


幅1メートルほどの路地を進んでいく。少し歩いたところで如月くんがふっと消えた。


「こっち行った。」


恭也の行った方向に行く。だがー





「嘘。」






「行き止まり!?」


確かにここに入った。でも見えるのはただの廃材とごみ箱。道なんてない。何だ、テレポートでもしたのか。いや、そんなSFの世界の話じゃあるまいし。


「あー見失った。もう帰ろうぜ。」


怜斗がそう声をかける。しかし涼はその場から動かない。



(……いや待て。ここに入ったことは確かなんだ。だから絶対どこかに通れる場所があって………………)





………………ん?




「涼?」



涼は廃材を3、4本どけた。





「やっぱり。これフェイクだ。」


廃材をどかしたその先に一本の道があった。人一人が通れるくらいの路地だ。



「これ死角になってて見えないのか!」



その仕掛けに怜斗がはしゃぐ。どこに繋がっているのか分からない、地図アプリにも載っていなさそうな道だ。普通ならここで引き返す。でも、ここまで来たんだから行くしかない。


「行くぞ。」


涼が先頭になり、路地を数歩進みだしたときだ。



ドッ‼



「いっって…っ‼」




涼の背中に痛みが走った。足がふらつき、壁にもたれかかった。そのとき、手がこっちに伸びてくるのが分かった。誰だ……暗くて顔が見えない。





―やられる。









涼はギュッと目をつむった。






……?







恐る恐る目を開けると、手が顔の前で止まっっていた。そのまま目線を上に上げる。




…………アッシュカラーの髪、切れ長の目、そしてギターケースとヘッドフォン。









「如月……くん?」



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