Dying music 〜音楽を染め上げろ〜
第一音
はじめまして。
「ん~…。」
唸りながら目覚まし時計を止めた。カーテンの隙間から入ってくる太陽の光を浴び、ベッドから身体を起こす。そして先ほど止めた目覚まし時計を見た。
もう8時?うわー、やらかした。今日食当なのに寝坊した。
あ、初めまして、如月夏樹です。名前の通り、夏の7月生まれ15歳。8時ってことは学校遅刻じゃねって思っている人いるでしょ?生憎、今学校行っていないんですよ。
家はみんな出かけてしまってシーンとしている。着替えた後、顔を洗って化粧水を塗る。それからテーブルの上に置いてあった朝食を電子レンジで温めている間にテレビをつける。いつも見ている情報番組のチャンネルに設定する。それからは一人静かに朝ごはん。ほとんど毎日こんな感じ。
朝食を食べた後は片付けをして、勉強を始める。今日の課題は一番苦手な数学。
「えっと、ここが2だから、答えは36か。」
独り言を言いながらで課題をこなしている。そのあとは昼食を食べてまた勉強して。あ、朝の食当忘れたから夕飯作っちゃおう。この家、家事が当番制になっていて曜日ごとに変わるんだよな。んで、今日僕が朝担当だったんだけど忘れてしまいました。
気が付くともう4時半。
「ただいま~」
蓮が帰ってきた。
「おかえり~」
キッチンから大きめに声を出す。部活終わりなのかリビングに寄らず、そのまま脱衣所直行。
「夏樹ー、洗濯回してもいいー?」
「いいよー。柔軟剤なくなりそうだから補充しておいて―」
「おー」
しばらくして部屋着に着替えてくると僕の顔を見るやいなや
「そういえばお前、今日の食当サボったな!?」
と、指をさされるやっぱり言われるか。
「サボってない。寝坊しただけ。」
「いや同じだろ。」
「今ちゃんと夕飯作ってるから!」
見て分かれ。こっちは謝罪の意を込めて、ミネストローネスープ作ってるんだ。野菜何種類も使っている疲れた身体に沁みる特製スープだからな。
「ただいま〜」
あ、麗華ねぇも帰ってきた。今日はバイトないんだ。
「ミネストローネのにおいする!」
リビングに顔を出すとそれだけ言って自室へ向かった。麗華ねぇは食当のことあんまり気にしてなさそう、かな。スープはできたから次は野菜炒めて味付けして、と。
「ただいまぁ~。…夏樹ぃ~」
お母さんは帰ってくるとすぐに僕の名前を呼んだ。
「今朝はごめんなさいでした。でも夕飯はちゃんと作ったよ。」
言われる前に謝った。お母さん今日早番勤務だったのに動かしちゃってごめん。来週は3回朝担当するんで許して。
「夏掛、今日あるだろ?先に夕飯食っちゃいな。」
雄大さんに言われて現在時刻を確認する。やべ、あと1時間で出ないと。ご飯を急いで食べ、とすぐに自室へ戻る。片付けは申し訳ないが、雄大さんに任せることにした。リュックにヘッドフォンやら一式を詰めて玄関へ。
「気を付けてね。」
「うん。行ってきます。」
そうして僕はギターを担いで夜の繁華街に向かった。