Dying music 〜音楽を染め上げろ〜
「………え、り、涼……え」
「………うん。俺も今朝気づいた。」
「おいおいおいマジかよ……」
「女子っ!?」
如月くん?如月さん?なつきさん?ナツキちゃん?あぁダメだ分からん。
特徴的な髪色、切れ長の目、ギターを弾いていたあの細い指。俺らの目の前にいるのは確かにあの如月ナツキだ。でも。
スカート履いてる。……
涼たちがずっと男だと思っていた如月ナツキは女の子だった。
朝、扉が開いたあと、急にみんなの話声が止まった。不思議に思って扉の方を向くと如月ナツキが入ってきたんだ。まさかの展開に涼は教科書を床にぶちまけた。そんでよくよく見たらスカート履いてるじゃないか。その出来事に衝撃を受けて開いた口が塞がらなかった。
だだだって、僕って言ってたじゃん?
言葉遣い完全に男子だったよ?
覚えてるよ?
隣の怜斗は口を開けたまま。恭也は「やっぱりなぁ。」と1人で呟いた。
くっそ、恭也気づいていたのに教えてくれなかったな。だからこんな反応薄いんだ。
「何で最初に教えてくれなかったんですか!?」
夏樹の後ろにいる風間さんたちに聞く。
「だってその方が面白いかなって思って(笑)」
「やっぱりこうなったね。」
えぇ、俺らだけ分かっていなかったのかよ。
「ほらスカート、ちゃんと履いてるじゃん。」
如月さんがスカートの裾をひらひらさせた。
根本的に…基本的な部分から勘違いしていたってことかよ。俺たちの反応とは裏腹に佐野さんたちはけらけらと笑うばかり。あ、大事なこと忘れていた。
「今日さ、」
軽音楽部のことを聞こうとしたが、タイミング悪く行ってしまった。
あ~、言いそびれた。
それから放課後―――――
「よし、じゃあ始めるかぁ。」
「結局来なかったな。」
「帰りのHRの後きこうとしたんだけれど、気づいたらいなくなってた。」
やっぱり入ってはくれないのか。ここまできたら潔く諦めるしかない。ひっそり3人で同好会からスタートだ。
がらら……。
ゆっくり戸が開いた。入ってきたのは、
「如月さん!?」
ゆっくりとこちらに近づくと
「………る。」
何かぶつぶつ呟いた。
「へ?」
「だから……入る。……その、軽音楽部……」
「「……ぃぃよっしゃぁぁぁーーーーーいい!」」
待っていた言葉をついに来てブチ上がった。喜び過ぎて恭也にぶたれたのはまた別の話。