Dying music 〜音楽を染め上げろ〜
涼が名付けたAMITIE。
よくそんな外国のアーティスト知ってたな。
「友情」、ね。
本当にそんなものがこの世に存在するものなのか。
人は巡り巡る。付き合っていく人間は人生のなかで何度も変わる。たかが、中学校や高校の3年間で「友情」と呼べるほどの信頼関係を築くことは可能なのか。
僕は無理だった。
浅い人間関係。
ただのクラスメイト
ただのチームメイト
ただの顔見知り。
あの3人とは、色葉や彩音とは、この先も「友情」という言葉で繋がった「友達」でいられるのか。
「師匠、友情ってどう思いますか?」
「急にどうした。」
師匠は顔も広くて色々な人と交流がある。だから人間関係って何かなって考えたときに師匠に聞こうって思った。
「気になって。」
師匠は作業の手を止めると、
「お前はどう思う。」
そう聞いてきた。
「僕は、言葉で作られたただの形に過ぎないと思います。だって人生の中で何万、何百万の人間に会うんですよ?その中で特別信頼できて、なおかつ心が休まるとか、友情ってそういう感情を持てる人間ですよね?自分の周りにそんな人間が現れるとは思いません。」
思っていることを口にした。
「やっぱりお前はひねくれものだな。」
「真面目に言ってます。」
だって本当のことだもん。歌の歌詞の中にもベストフレンドだとか、親友だとかあるが、その本質的な意味だが分からない。どこから友達でどこから親友?線引きも不明。
「俺は友情ってのは『仲間』から生まれると思うんだ。」
仲間?
「友達と一緒じゃないんですか?」
「辞書で調べてみろ。『友達』は一緒にいて気楽だったり楽しいなって思う奴。『仲間』ってのは一緒に目標に向かって努力したり、互いに高めあったり、辛い時支え合えるやつらだ。似ているようで少し違う。」
へぇ、初めて知った。
「仲間として一緒に頑張ったり、高めあったりするうちにだんだん幸せだとか、楽しいなって思うようになる。その積み重ねがお前がさっき言ったような信頼だとか心が休まるとかの関係性になるってのが俺の考えだ。それに、………互いを高めあえる仲間なら近くにいるんじゃないか?」
え?
一瞬誰のことかわからなかったがすぐに3人の顔が思い浮かんだ。
「…あいつらは僕にとっての仲間なの?」
「そのうち分かるさ。」
まだ靄がかかっているようだ。
今はまだ、仲間とか友情とかそういうものは知らない。
でも、いつかその意味を知れたらいいなとは思う。