Dying music 〜音楽を染め上げろ〜
6月。
今日は…体育祭です。
クッソ暑い。7月になってもいないのに気温30度近いんだぞ?地球温暖化?オゾン層の破壊?焼けないように日焼け止め塗りたくった。
体育祭と文化祭は髪染めやメイク可能だから今日はみんなヘアメイクしてる。みんなすごいよ?怜斗緑軍なんだけれど、髪の毛緑にしてるの。藻が生えたのかと思ったわ。あ、僕は赤軍ね。
「どう?楽しんでる~?」
彩音が聞いてくる。
「暑い…建物の中入りたい。」
「まだ始まったばっかりじゃん(笑)」
彩音が赤い髪を揺らす。彩音は応援メンバーだから衣装着て髪の毛も染めてる。赤軍のテーマである「中華」をイメージした衣装とメイク。すごいなぁ、これ手作りなんだもんな。
「借り物競争のあと、応援あるから見ててね!」
「うん。動画とっておくね。」
「よろしく!」
ちなみに僕は競技には出ない。救護班として交代で入るだけ。さっきも3年生の男子が騎馬戦で落ちて運ばれてきた。あれはビビったよ。
それよりも……本当に暑い。電動ファン持ってくればよかった。
「おい。」
後ろから声がして振り返ると恭也が立っていた。
「どうした?」
「別に。いたから声かけた。」
そういうと隣に座った。
「怜斗と涼は?」
「怜斗は選抜リレーの練習。涼は綱引きの招集かかって行った。」
「ボッチじゃん。」
「お前もだろ。」
「競技出ないの?」
「得点係だからない。」
そんな話をしながら2人でスマホをいじる。
「俺こういうイベント苦手なんだよ。」
恭也がぼそっと呟いた。
「僕も。嫌いじゃないけどさ。何なら家でギター弾いていたい。」
「同じく。」
共感する恭也。なんだ、一緒かよ。
「なぁ、ラウンドの新曲聞いたか。」
恭也がミュージックアプリを開く。
「うん。あれギタームズくない?」
「……夏樹も難しいとか感じるんだ。」
「感じるに決まってるじゃん。」
クラウドが今回リリースした曲はこれまでにないほどのアップテンポロック。MVは500万回再生を突破。今では弾いてみた・歌ってみた動画が多く上がりはじめている。
「あれは無理だ。挑戦しようと思ったのが馬鹿だった。」
「馬鹿だな。」
と、恭也をからかった。
「お前に言われると腹立つんだよ。口閉じろ。」
ギロッと睨まれた。なんだよ。話題振ってきたのはそっちだろうが。
涼の綱引きを見て、そのあとに彩音たちの応援パフォーマンスを見る。もちろん、どちらもしっかり動画に収めた。あとで送ろう。競技が終わって席を立とうとしたとき、
「あっれー?いつの間に仲良くなったのぉ~?」
軽快なスキップで現れた怜斗。その隣には競技を終えた涼。
「仲良くなっていないから。」
「動画とった。あとで送る。」
4人で色々喋る。そのとき、
「夏樹~!」
「色葉、彩音。」
応援を終えた彩音が色葉とこちらに来た。
「写真撮ろ!」
スマホを取り出して寄ってくる。
「じゃあ俺ら行くわ。」
その様子を見て涼たちはその場を離れようとした。しかし、コミュ力お化けの彩音だ。
「えっ、みんなで撮ろうよ~!」
そう言って、3人を引き留めた。
「いいんですか?」
「もちろん!てか、みんな軽音楽部でしょ?知ってるって!」
僕と色葉、彩音が前列、あとの3人は後列に並んでカメラを構える。
「もうちょっと詰めて~」
「多賀君が身長高すぎて見切れるっ、」
「涼、縮め。」
「無理言うな!」
詰められるだけ詰めてカメラの画角に入る。
「いっくよ~!ハイ、チーズ‼」
パシャ!
初めてみんなで写真撮った。みんな笑顔…いや、僕と恭也は真顔か。
こういう「青春」、経験しないで高校生活終わるのかなって思ってた。いいものだね、こういうのも。
「あ、彩音の応援見てたよ。可愛かった。」
「やった!ダンスちょっとミスっちゃったけどね。」
えへへ、と頭をかく彩音。
「ダンスなら怜斗が上手いよ。10年くらい習ってるから。」
そう怜斗を指さした。
「すごいね!私リズム感皆無だからさ。踊れる人尊敬だよ!」
「コツ掴めば意外と簡単だよ。」
「踊ってる動画ないの?見たい~」
「おおいいよ!」
ワイワイ会話が盛り上がる。
「コミュ力お化け同士だと話も弾むんだね。」
色葉がふふっと笑う。