Dying music 〜音楽を染め上げろ〜



5日後、バンドフェス当日。



緊張する。昨日は緊張してあまり眠れなかった。涼は控室の端っこでソワソワしていた。



(もうすぐ出番……。俺がしっかりしないと。……よし。)




「3人とも曲のー」


「あぁぁあ~」




怜斗が奇声を上げながら走り回っている。せっかく最終確認しようと思ったのに。



「ありゃ末期だな。」


そう呟く恭也。


「お前は緊張してねぇの?」


涼の問いかけに恭也はギターの手を止めた。そして深く息を吐いた。



「緊張してるに決まってる。俺ら人前で演奏するの初めてなんだ。ブーイング来たらどうするかずっと考えてる。」

「やっぱりそう考えるよなぁ~……」

「うぇぇ~~ん!」




相変わらず騒ぎまくっている怜斗。



「ちょっと落ち着けー」



相手するのも面倒になり棒読みで注意する。夏樹はさっきからずっと涼しい顔でギターを弾いている。焦りまくっている自分たちが馬鹿らしく思うほどの落ち着きぶりだ。



「夏樹はMidnightで弾いているからそれほどでものないのか。」



でも夏樹はすぐに否定した。



「Midnightよりも大きいから緊張するよ。それにみんなとしっかり息が合うのかも心配。」

「息?」

「お前らはずっと一緒だったんだろ。万が一何かあっても目線とか、言葉以外の方法で意思疎通できる信頼度は持ち合わせている。でも僕は加勢して少ししか経っていない。上手く調和できるか分からない。」




そうだ。俺らはお互いのことはよく知っている。何考えてるかとかも大体わかる。でも、夏樹は。ついこの間入ったばかり。まだちょっとした心の壁があるのは確かだ。




「ぁあぁああ~~~!」




怜斗、あいついい加減にっ、



「うるせぇっ!!」


さっきから叫びまくってる怜斗に叫び、やっと止まった。今度はこっちに勢いよく走ってきた。




「だって緊張でどうにかなりそうなんだもん!俺が一番下手なのに…。足引っ張ったらどうしようって怖いんだよ。」





手が震えてる。これ相当緊張してる。


結成2か月未満。楽器レベルもバラバラ。そりゃそうだ緊張する。でもな、




「そんなの俺もだわ!最初俺のドラムで始まるんだぞ!ミスったらどうしようって100万回考えたわ!」

「俺もだよ。失敗してばっかりだからな。」

「僕もソロミスるの怖い。」





涼に続き、みんな次々に不安を口にした。全員緊張してるんだ。みんな同じだ。



「うう~、ベースミスったらごめん。」




怜斗の事前謝罪に、



「テンポミスったらごめん。」

「Aメロズレたらごめん。」

「入りミスったらごめん。」





みんなで謝罪。何だこの状況は。




「みんなで最初っから謝罪会見してんじゃねーよw」


「www」





涼のツッコみで全員笑った。




「さぁ、気分がほぐれたところで気合入れようぜ。」




みんなで円陣を組む。




「初ステージ、楽しんでいこう!せーのっ!」







「「「「AMITIE‼」」」」

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