Dying music 〜音楽を染め上げろ〜
――「続いては神奈川県立清条高校軽音楽部、AMITIEのみなさんです。」
アナウンスがかかり全員でステージに上がる。おお、意外と人いる。涼は司会の人からマイクを受け取ると話し始めた。
「AMITIEです。今回結成して、は、はじめてのステージです。よろしくお願いします。」
声、大丈夫か?緊張してんな。みんなに伝染しなければいいけど。
マイクを切った後、それぞれ定位置につく。右サイドに恭也、その反対側に僕。中央には涼、そして前にベースボーカルの怜斗。
失敗なんか気にしないで、今自分たちが出せる精一杯の演奏ができればいいんだ。
(行くぞ。)
涼がみんなにアイコンタクトをとる。
カッカッカッカ…‼
♪♬ー♪~♪♬♪♩~ーー
涼のカウントで「地上線上の彼方」の演奏がスタート。ドラムから始まり、そこにギターをベースが徐々に合わさる。15秒ほどのイントロのあと、怜斗が歌いだす。
♪♬♪ーーー♪♬~~…
いいね、入りは問題なし。恭也ともギター合ってる。涼も今日調子いいのか、いつもより安定感がある。ペースを保ったままいよいよサビだ。
♪♬~ーーー♪♪~~♬
♪♪---♬♪♪♬ーーー♪
ここで俺と恭也がパートチェンジ。僕が主旋律を弾く。
♪♬ッ!~
ワンテンポ遅れた。それに気づいた恭也が僕の音に被せるようにしてカバーする。
(ごめん。)
そう意味を込めて視線を送った。
(ミスんなよ。)
そう目を合わせてくる恭也。その後は大きなミスをすることなく1曲目を終えた。
♪♬♪♪~~♬♪‼‼
次はアップテンポのボカロ曲、「カミナリロジック」
ここは恭也のソロからスタート。
♪♬♪♪~~~!!♪♬
え、グリッサンド使ってる。練習でやっているところ見たことなかった。
そのあとドラムとベースが合わさる。この曲はドラムの音取りが難しい。一度リズムが変わるところがあるからつられないように、
♪♬ーーー!
…っと、怜斗少しズレたな。すぐさま僕と恭也がサポートする。大丈夫、大丈夫。
――「稲妻のようにーっ‼」
サビで怜斗が声を張る。高音すげぇな。僕より全然出てる。ただ、焦るとピッチズレるからそこだけ気を付けてもらいたい。
曲終盤、ここは俺の見せ場のギターソロ。
♪♬♪♪ーーー‼♪♬
音を遊ばせながら強弱をつける。暴走するんじゃなくて、そのままラストに繋げられるように切り方や音階を調節する。
ギターの音色だけじゃない。
音が、合わさっている。
バンドはもうしない。
そう決めていたのに、またこうやって弾けるなんて。
ラスト、手抜かないでやりきるんだ。
――「切り裂く稲妻カミナリロジック!」
……演奏終了。会場からは大きな拍手が起こった。間違いない、今日一番の拍手だ。そのまま全体で挨拶をしてステージを降りた。