Dying music 〜音楽を染め上げろ〜
急にゆずながそう呟いた。
「…もしかしてゆずな、学校行こうと思ってる?」
するとゆずなはコクッと頷いた。マジか。
「私、これ以上お母さんに迷惑かけたくないの…。それに、勉強も…ちょっとしてみたい。でも、ナツみたいにできない。」
消えるような声でそう話す。
前の僕と同じ。
行こうとする気持ちは心の中にある。でも、それを実行に移すことがどれだけ難しいか。怖くて仕方がない気持ち。心の中で葛藤する気持ち。痛いほど分かる。つい、数か月前の自分の姿だ。
そうか、ゆずなも変わりたいんだ。僕はゆずなの顔を見た。
「もし、ゆずなが本当に学校に行こうとしているなら応援する。無理に教室に入らなくてもいいんだ。中学校なら保健室登校でも卒業できる。高校は、全日制の他にも通信も夜間もたくさんあるし。」
中学校までは義務教育。相当なことがない限り、留年は無いはず。学校も卒業させるところがほとんど。実際に僕も保健室登校で卒業した。
「でも、みんなからどう思われるのかが怖いんだもん…………。」
「周りの目なんかいちいち反応しなくていい。ゆずなはゆずななんだから。」
「勉強ついて行けないかもしれない。」
「YouTubeとかにも解説動画とかたくさん上がっている。簡単なものなら僕も教える。」
言っていることこれで合ってるかな。自分の発言に不安はある。でも、ちょっとでいい。何か少し、ほんの少しのきっかけがあれば変われる。僕もそうだったから。
「些細なきっかけで、一歩の勇気は出るんだ。相談あったらMidnight来い。いつでも聞くからさ。な?」
いじめ・雰囲気に馴染めない・勉強についていけない・友達関係の悪化・病気。
学校に行けない人の理由は人それぞれ。僕もゆずなもそれと闘ってきた。
今のゆずなの手助けができるのは僕。
少しでも背中を押す力になれるのなら。