Dying music 〜音楽を染め上げろ〜
全身に電気が流れたような衝撃を受ける。全身が硬直して、動かない。
どうして、どうやって分かった…。
気持ちの整理ができない。驚き、恐怖、困惑。感情が入り混じってクラクラする。そんな状況下でも、冷静さを何とか保とうとする。
「…顔見せていいんですか。」
歌い手は基本、顔出しはしない。だが、シュート…、コードは自ら正体を晒してきた。俺に知られることに抵抗はなかったのか。
「だって君こうでもしないと信じてくれないでしょ?」
コードは僕のことについても話してきた。
「ナツくんのことは知ってる。正体不明の現役高校生歌い手、Cyan。」
ナツの名前を知っている……。俺の正体知ったうえでステージに立たせていたんだ。
「僕の、…どこまでを知っていますか。」
コードはそうだなぁ、と腕を組んで考えた。はっ、考えるだけの情報量はあるってか。
「女ってこと、学校が清条ってこと、Midnightでギターサポートしてること、とかかな?」
ほぼ全部じゃん。
…あー、詰んだわ。
性別は仕方がないとして、高校名まで知られているとか終わってんだろ。つか、どこで知ったんだよ。
もう半分馬鹿らしくなってきた。
この状況からは言い訳も、言い逃れもできない。
しゅっ………。
「Cyan!」
後ろからマスターの声が聞こえたが、それを無視して仮面を外した。
フードも取り、髪をかきあげた。
そしてコードの目を真っすぐに見る。
「改めましてー」
「歌い手のCyanです。」