Dying music 〜音楽を染め上げろ〜

耳が死にそう。なんだこのバンド。ボーカルが暴走していて演奏と合っていない。こっちのバンドはオリジナル曲の歌詞がイタい。


中高生バンドフェス。県内の軽音楽部や同好会が集まって演奏するフェスという名の発表会。


知り合いが出てるから見に行ったんだけれど、大半はひどい物だった。時々、「おお、うまいな」って思うバンドがあるくらい。あとは雑魚。


ただ、あのバンドはなんか違った。プログラム表のバンド名を見る





「AMITIE」




ドラムはしっかり音とれているし、ギターはそれぞれパート分けていていい感じにまとまっている。ベースはちょっとイマイチかな。でも歌は上手い。耳障りではないし、客の反応も割かしいい。結成して初めてのステージって言ってたけれど、それを感じさせない演奏。



その中で一人、聞き覚えのある音がした。



……ギターを弾いている女の子。




音や弾き方からしてあの中で一番技術がある。どっかで聞いたことがある。ギターソロのアレンジ、フレーズ。誰だ…。頭の中の記憶を必死に辿った。





―あの子だ。








４月、とあるライブハウスに入った。


Midnight。色々なミュージシャンやバンドマンが集まるって客から聞いたんだ。


行ったその日、店のタイテには記載されていないギタリストがステージに上がった。青色のギターを持ってスラッとした華奢な子。







「こんばんは。ナツです。今回はギターソロで弾かせてもらいます。」





ナツというその子は弾きだした。



♪♬♪♬～～～～…！





音を聞いた瞬間、固まった。

なんだ。俺の知っているギターじゃない。

どうやって弾いているんだ。

ギターだけの音なのに全く退屈にならない。

次々と音が生み出されていく。

面白いほどの緩急さとテクニック。

ギターの知識がほんの少ししかない俺でもとんでもない演奏だということがわかる。






外見から見るに、この子は俺と歳はそう変わらないだろう。でも、こんなの、子供が弾くレベルじゃない。




「すみません、あの子って誰ですか？」

「ナツのこと？あの子はこの店の店長の弟子でね。普段はバンドサポートとかヘルプで演奏しているんだけど、たまにこうやってギターソロでステージしてくれるんだよ。」


店長の弟子……。店長ってマスターの友人だったよな。


「お兄ちゃんは見るの初めて？」

「はい。」

「だとしたら運がいいよ。ナツがソロでステージ立つのは珍しいからな。」




どうやらナツという人物はランダムスケジュールで演奏しているらしく、いつここにいるかは不明だと聞いた。それから、ナツというギタリストを見るためにMidnightに何度か行くようになった。でも、10回行ってナツの演奏を聞けたのはコラボ含め、たった２回だけだった。







いや、あれを含めたら３回か。