Dying music 〜音楽を染め上げろ〜



思った。



現段階で僕にはこの活動をしている中で明確な目標がない。


想いや歌を届けたい、人の心を動かしたいってのは本当。でも、自分が音楽をやり続ける、Cyanとしてあり続ける理由や最終目標は分からない。


何を成し遂げたい?

どこまでいきたい?

これから、どうしたい?





「俺はあるよ。」



コードの声に顔を上げた。



「俺は自分の歌で多くの人を魅了したい。そんで、いつか必ず、でっかい会場でライブする。それが俺の音楽のビジョンであり目標。無理って言われても目指し続ける。」


コードは言葉一つ一つに力を込めてそう言った。





「もう一度聞く。お前はどんな音楽がしたい?」





「…僕は………………」





ワンフレーズで人の心を奪う演奏がしたい。

貪欲にすべての音を思うがままに操りたい。

この手で演奏して、想いを誰かに届けたい。

歌を聞いて心を動かせられるようになりたい。

自分の感情を隠さず演奏したい。

音楽を自分の色に染めたい。












「ちゃんと自分のイメージあるじゃん。」




……はっ……。




心の中で思ったことを無意識に口に出してることに気がつかなかった。……もう今日ごちゃごちゃ。泣きそう。



「今日で今足りないものが何か分かったでしょ?あとはそれを磨いていくだけだよ。」




いつの間にかコードはいつもの調子に戻っていた。



あぁ、まだまだ幼稚だ。反論することも、実力で証明することも今の僕にはできない。





「ちょっと言い過ぎたね。ごめんね。」



コードは僕の頭を優しく撫でた。


「………触んな。」


ペッと手を払いのける。こっちは悔しくて泣くの必死に我慢しているんだ。近づいてくんな。触んな。どっか行け。


今日調子最悪。会場の雰囲気にやられて、コードにバトル負けてここで正論食らって。厄日かよ。



「駅まで送る。喉、今日はしっかりケアしてから寝てね。」




僕にやりないもの。

場慣れの数。体力。

発声方法の見直し。

高音域の改善。声域の拡大。

それから、音楽に対する明確な目標。

目指す場所。




…たくさんある。ありすぎる。でも、これだけ見つかるってことはこれからまだ伸ばせるってことだ。




足りないピースを継ぎ足して、進化させる。



負けるな。


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