Dying music 〜音楽を染め上げろ〜






「お前ら2人ともいいところまで行くんじゃないか?」




急にマスターがそう言った。



「俺も、ですか?」


自分の名前が含まれていることに疑問を持ち聞き返す。

 

「あぁ、お前は気づいていないかもしれないが、ネットだから知名度が低いだけであって実力は相当あると思うぞ。」



ネットだから、ね。まぁ確かに。歌い手は地上波じゃあまり取り上げられないし、「歌手」には負けるよね~。学校にも知っている人いないもん。


 
でもさ、この界隈には才能の原石が山ほどいるんだよ。それも中学生や高校生などの若年層にね。隠れているだけで、磨けば光る逸材がたくさんいる。
 


その中の一人がCyanだ。





Cyanの驚くべきところは自己プロデュース力だ。すべて一人で音源を完成させてしまうほどの能力。そして作詞作曲での語彙力と知識量、感性。自分のスタイルを既に確立しているんだ。


俺はCyanと違って専門的な知識がない。ピアノで簡単なメロディーを作ったことはあっても曲なんて作れない。音楽に対するセンスと適応力が半端ない。どうなっているのか、一度頭の中身を見てみたいくらいだ。


それに前にここで即興コラボしたときも。その場でイカれた発言した俺も俺だけどさ。まさかCyanがあそこまで合わせてくるとは思わなかった。だって打合せマジで何もしていなかったのにハモリチェンジできるのかよって。あれは鳥肌が止まらなかった。




まだ高校生。そんな彼女が、トップに立って可能性を広げて想いを発信し続けている。これは誰もができることではない。






今更だけど、とんでもない人間と知り合いになっちゃったよ。




………新しい「ライバル」ってところかな。


潰すとか、負かしてやりたいって気持ちじゃなくて、


「共に成長したい」相手。




< 94 / 191 >

この作品をシェア

pagetop