Dying music 〜音楽を染め上げろ〜
先週、夏休みに入った。グラウンドでは陸上部と野球部が炎天下の中練習している。
蝉の声が五月蠅い。バス停から学校までたった5分の道のりなのに汗だくになってしまう。
暑いぃぃ~…。ブラウスの袖をさらに捲り上げた。ウチの学校、なぜか部活動の登下校時にでも制服を着用することが校則。何で体操着じゃダメなんだよ。汗で体にスカートがくっついて気持ち悪いったらありゃしない。
「おはよ。」
「夏樹!久しぶり!」
みんなに会うのは久しぶり。マスターのところでのステージ、それから個別にコードの件があって部活にずっと参加できていなかった。着替えてギターを準備する。
今日は練習前に文化祭に向けての話し合いとMidnightのステージの振り返りがメイン。みんなで中央に集まって座る。
まず、文化祭について。
「曲数は3曲。MCも入れる予定。」
曲の他にも実行委員会から配布された資料を見ながら時間配分も考える。文化祭ということなので、青春系やアニソンなんかもいいね、などと話す。
「今上映中の映画の主題歌とかどう?」
怜斗がプレイリストを見せる。あ、これ聞いたことある。ドラムのアップダウン激しいけれど乱打があってかっこいい曲。映画の主題歌だったのか。
「『コックピット』もいいと思う。」
「コックピット」スピード感のある曲調、頭に残るイントロ、爽快感抜群のサビでは絶対盛り上がる。
「それ俺も思った!盛り上がりの代表曲だし。」
「けど、これギターメインだから相当難しいぞ。夏樹と恭也イケるか?」
そう。この曲の難所はギター。とにかく速い。しかもギターのソロパートもチラホラ。それにこのバンドの構成はドラム、ベース、ギター、キーボード。キーボード不在のAMITIEでこれを演奏するにはキーボードパートもギターで弾く必要がある。でも、
「「イケる」」
恭也と同時に返事をした。だってこの曲、一度やってみたかったし、やりきったらブチ上がると思う。
「さっすが。」
そのあともCMソングやアニソンなど様々なジャンルを聞いて決めた。この3曲を本番の10月までに仕上げていく。いいところまでまとまったら次はMidnightのステージの振り返り。バンドステージを見ての感想、どう思ったか、僕らに何が必要かを話し合う。
「3番に出ていた社会人バンドが印象残ってる。すげぇ楽しそうだった。身体全体でリズムとっててダンスみたいだった!」
怜斗がそう言う。
「俺らはまだリズムとれるほど余裕ないな。弾くので精一杯って感じ。」
「焦りもあるよな。この前のバンドフェスの映像も見たけれど全体的に固かった。」
全員で納得する。僕もノーミスを意識しすぎて固かった。もっと雰囲気をつけたりみんなでアイコンタクトとかもとればよかったな。
「全部のバンドに共通していえることは、曲の見せ方がうまいってことかな。歌詞に合わせて強弱をつけたりさ。」
参考にしたいこと、必要なことをまとめて「軽音楽ノート」に書き込んでいく。
「これくらいだな。」
大体出そろった。全体としては、ただ弾くだけじゃなくてもっと表現力を磨くこと、基礎をもっと固めること。個人ではテンポがズレないように、アレンジの練習、スラップの練習。それぞれ決めて苦手意識をなくしていくこと。