Dying music 〜音楽を染め上げろ〜
「じゃあ話し合いはお終いかな。」
練習を始めようと動こうとしたときだ。
「ごめん!一個聞きたいことある!」
涼の声に全員で動きを止めた。涼はソワソワしながら俺の方を向いた。
「どうでもいいことかもしれないけれど、ずっと気になってて…。夏樹、あの時俺らのこと仲間だって言っただろ?その、い、意味って?」
意味?
「特別深い意味はないよ。」
そう言った。だって言って何になるんだ。
「じゃあ俺からも一つ。」
そう怜斗が隣に座る。
「俺らってまだ信用ない感じ?」
「そんなことないよ。」とすぐに返事ができない。黙り込む俺に怜斗が言う。
「やっぱりさ、バンドメンバーだからお互いのことを話すことも必要だと思うんだわ。夏樹の気持ちが知りたい。」
「別に信用とか、―」
…………曖昧にしちゃ、ダメ。自分の言葉で伝えないと。
「僕は、」
深呼吸をしてから話した。
「僕は、人と打ち解けることに時間がかかる人間っていうか…。友達とか、信頼関係だとかが、はっきりそういうものが、分からない。小さい頃から楽器はしていてバンドサポートとかもしているんだけど、ちゃんとバンドを組むのは初めてで。」
「そうか。」
「でも、…………フェスでみんなの音が合わさったときちょっと感動した。バンドって楽しいなって感じた。……みんなと演奏したり話したりすることは楽しい。それは、ここにいない色葉や彩音も同じであって……」
上手く言葉がまとめられない。本だって小説だって読んで歌詞だって書いている。でも、こういうときに限って適切な言葉が見つからない。
あ……、これなら。
「聞きたいことがあるんだけれど。」
バンドを続けていくのなら聞いておきたいことがある。
「3人はどんな音楽がしたい?」