左遷された王女は青銀の風に守られる ~地属性魔法で悪人退治を楽しんでいたら大変なことになりました~
 これはなにを見させられているのかしら。
 ああ、この人物が実の弟だなんて。

 ため息をつき、フェデリーカ・スフォルツァは弟のコルネリオを内心で罵った。口に出しては言わない。パルミリーア王国の王女としての品位に関わるから。
 十五歳にしてやっていいことと悪いことの分別もつかないのか。私の二歳下なだけなのに。もっと王子としての自覚持ってよ。

 まあこの子には無理か、とフェデリーカは眺める。彼の隣には、薄いピンクのドレスを着た婚約者のレベッカ・ランペドゥーサがいる。金髪に、潤んだ青い瞳。薄紅をさした白い頬。男性が好みそうななよなよした外見で、くねくねとコルネリオに腕を絡ませる。
 今宵は父である国王カロージェロ・スフォルツァの誕生日を祝っての舞踏会だった。

 着飾った男女がフロアにあふれ、今はフェデリーカたち三人に注目している。
 国王夫妻も兄であるジルベルト王太子とその妻も、今は休憩のために下がっている。
 その隙をついて、弟はあることを大声で言ったのだ。
 そのセリフに、フェデリーカのみならず周囲も唖然とした。
 フェデリーカの反応が気に入らなかったのか、コルネリオはむっとしていた。

「もう一度言う。フェデリーカ・スフォルツァ、私はお前との関係を終了して、レベッカ・ランペドゥーサと結婚する!」
 大声で、彼は宣言した。

 だから、その誤解を招く言い回し、どうなの。ただの姉と弟なのに、なんか深い関係だったと思われるじゃない。そもそもあなたは彼女と婚約していて、結婚するの決まってるのに。我が弟ながら、バカだわ。わかってるのかしら? いえ、わかってるわけないわよね。

 フェデリーカはため息をついた。
 レベッカはうるうるとコルネリオを見ている。
「姉に対してその物言い、どういうことですか」
 フェデリーカは言った。抵抗しないと、周囲に変な誤解を招くだけになってしまう。

「レベッカに対する度重なる嫌がらせ、俺が知らないとでも思ったのか! ちょっとくらい魔法が使えるからといい気になるな! 地属性がなんの役にたつ! 彼女の火属性のほうが世のためになる!」

 ああ、とフェデリーカは頭を抱えたくなった。
 最近はやりのお芝居で、こういう感じの物があると聞いたのを思い出した。悪役令嬢に対して王子が婚約破棄をして、ヒロインと結ばれるというストーリーだ。
 バカな弟はそれに感化されたかレベッカにそそのかされるかして、実際にやってみたくなったのだ。周りにどういう影響を与えるのかもわからずに。
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