左遷された王女は青銀の風に守られる ~地属性魔法で悪人退治を楽しんでいたら大変なことになりました~
父王カロージェロに呼び出されたのは翌日のことだった。兄のジルベルトが同席している。二十四歳になる兄は父の補佐として働いている。
「お前には国境付近の離宮に行ってもらう」
いらいらと、カロージェロは言う。
「なぜですか」
フェデリーカの頭に昨日の騒ぎがよぎる。
「お前、コルネリオの婚約者をいじめているらしいな」
「父上、それは誤解だと申し上げました」
「黙れ」
カロージェロはジルベルトの言葉を遮った。
「お前を廃嫡してやりたいところだが、それは免じてやる。田舎に行って戻って来るな」
うなるようにカロージェロが言った。弟を溺愛する父には、自分はうとましいのだ。
「承知いたしました」
フェデリーカは頭を下げた。
「やりすぎです!」
「いいのです、兄上」
「しかし」
「なるべく早く出て行け」
カロージェロが冷たく言い捨てる。
「準備ができ次第、出立いたします」
「フェデリーカ」
ジルベルトは心配そうに彼女を見た。
「いいのですよ。そのほうが平和になります」
バカな弟の顔を見ずにすむ。父だって、もう自分の顔を見たくないのだろう。さみしいことだけど。
「なんとかするから、しばらく待てよ」
ジルベルトの困惑した声に、 フェデリーカはにこっと笑って見せた。