やっぱり血祭くんが好き!【こちらはマンガシナリオです】
6章
「まさか巫女メットとライン交換したん?」
朝、下駄箱で靴を履き替えていると、オレは登校してきた梅本に驚かれた。
「うん」
オレはあえて普通を装い、淡々と靴を下駄箱に入れる。
内心は、かなりドキドキして焦っていたんだが。
「なあ陽斗、お前がクラスで浮いた子を放っておけない性格だってのは知ってるよ。けど、巫女メットだぜ。末代まで呪われたらどうするんだよ」
「ただの噂だろ。神宮寺さん、良い子だよ」
「良い子? ホントか?」
「ホントだって」
「まあ、陽斗がそういうんなら、そうなんだろうけど」
「祟りなんか起きないよ」
「でもなぁ……」
きっと梅ちゃんは、神宮寺さんにまつわる学校の噂を気にしているんだろう。
彼女の機嫌を損なうようなことをすれば呪われるとか、そういった類の噂を。
「陽斗、梅、おはよう」
そのとき、学校の下駄箱にもう一人の親友、みっちこと三井がやって来た。
必死に走って登校してきたんだろう、彼の額には大粒の光る汗が浮かんでいた。
「なあみっち聞いてくれよ、陽斗のやつ、巫女メットと一緒に登校してライン交換したんだぜ」
「ふうん。別にいいんじゃない?」
お、さすがはみっち。
「そうだよな」
オレは嬉しくなって、ついみっちの肩をつかむ。
「そもそも噂を信じるなら、梅のほうこそ用心したほうがいいんじゃないか?」
みっちが、ナイキのスニーカーを下駄箱に入れながらいう。
「え?」
「巫女メットの機嫌を損ねると祟りが起きるんなら、陽斗は彼女と仲良くしてるんだし、無論問題はないだろ」
靴を入れたみっちが急に目を細め、おどろおどろしくいう。
「むしろそうやって陰で悪口いってる梅のほうに祟りが起きるんじゃないのか?」
「うっ……」
オレもそう思う。
みっちの意見に一票投じる。
てゆうか、そもそも祟りなんかあるわけないし。
少し、仕返ししてやろうとオレはみっちに加勢する。
つい調子に乗って両手を垂らしながら梅本にいった。
「梅ちゃんスイスに行くんだろ。飛行機に乗るんだろ。なら神宮寺さんの悪口いってる場合じゃないんじゃないのか」
「――っ」
あ……。
冗談でいったつもりだが、梅ちゃんの顔が予想以上に真っ青になる。
……なんか、ごめん。
ヘンな空気が流れた瞬間、
「さあ、チャイムが鳴る前に急ごう」
三バカの調整役みっちが舵を取ってくれた。
「あ、うん」
オレはうなずく。
「……おう」
梅ちゃんが鼻をすする。
「言い過ぎた、ごめんよ」
少し元気のない梅ちゃんの肩を叩くと、オレたち三人は廊下を走って二年三組の教室へと急ぐ。
階段を駆けるその最中、オレは実は神宮寺さんのことで頭がいっぱいだった。
細かいことだけど、一緒に校門をくぐると、なぜか彼女は「ごめん先行くね!」と、オレを置いて先に校舎に走って行ったんだ。
あれは、どういうことだったんだろう。
まさか、今度こそ神宮寺さんを怒らせてしまったのか?
あれだけ、みんながいる前で恥ずかしい思いをさせないって、固く誓ったのに。
なのに、バカなオレのせいで……。
みんなが見てる前で、オレと登校したのが恥ずかしかったのかな。
せめて校門前で別れて、別々に下駄箱まで行っていればよかったかな。
オレ……気遣いできてないよな。
ああ、しまったな。
夏合宿の打ち合わせをしたいからって、半ば強引にラインを訊いたのも悪かったかな。
いいや、絶対にそうだ。
階段を駆け上がりながらオレは頭を抱える。
ああ、やっぱりダメだ。
神宮寺さんを前にすると、緊張してどうも調子が狂ってしまうんだ。
昨日に続いてオレ……相当やらかしてしまっているよなぁ。
最悪だよ。
たくさんの生徒が行き交う中、堂々と登校なんかしたら、みんなに注目されるに決まってるだろ。
そんなこと、少し考えたらわかるだろ……。
バカだなオレ。
梅ちゃんとみっちの背中を追いかけながら、オレは後悔する。
でも。
でも、今日は学校まで、はじめて神宮寺さんと登校したんだ。
学校に着くまでの間、緊張したけど少しだけ会話もできたし。
興味深かったのは、神宮寺さんがユーチューブを観るのが好きだったってこと。
しかも、オレの恩人であるオーランドさんが推しのユーチューバーなんだとか。
なんか意外だったな。
オレは、神宮寺さんのことを少しだけ知れた気がして嬉しかった。
そう、一学期が終わる直前でやっと二人きりの時間を持てたんだ。
その点は良かったよ。
オレは考えを改めた。
一歩前進だもんな。
かなり迷ったけど、あそこで勇気を出して神宮寺さんに声をかけてよかったんだ。
もしも、もしも彼女が了解してくれなかったら……そう思うと、怖かったけど。
でも、神宮寺さんは優しいから、オレを気遣って一緒に登校してくれたんだ。
なんか緊張して、会話は弾まなかったけど……よくやったよ、オレ。
でもどうして彼女といると、ガチガチになるんだろう。
心臓の音が自分で聞こえるぐらいドキドキするんだ。
はぁ。
やっぱり。
やっぱりオレ、神宮寺さんのことが――。
そう思ったところで、チャイムが鳴った。
「やべ」
「陽斗、竜ちゃん先生が扉前で仁王立ちだ」
「マジ?」
あと少しで教室に間に合うところで、担任の鈴木竜二先生が叫ぶのだ。
「こらー、三井、梅本、朝野! 終業式に遅刻なんかするんじゃない!」
「「「ごめんなさーい」」」
朝、下駄箱で靴を履き替えていると、オレは登校してきた梅本に驚かれた。
「うん」
オレはあえて普通を装い、淡々と靴を下駄箱に入れる。
内心は、かなりドキドキして焦っていたんだが。
「なあ陽斗、お前がクラスで浮いた子を放っておけない性格だってのは知ってるよ。けど、巫女メットだぜ。末代まで呪われたらどうするんだよ」
「ただの噂だろ。神宮寺さん、良い子だよ」
「良い子? ホントか?」
「ホントだって」
「まあ、陽斗がそういうんなら、そうなんだろうけど」
「祟りなんか起きないよ」
「でもなぁ……」
きっと梅ちゃんは、神宮寺さんにまつわる学校の噂を気にしているんだろう。
彼女の機嫌を損なうようなことをすれば呪われるとか、そういった類の噂を。
「陽斗、梅、おはよう」
そのとき、学校の下駄箱にもう一人の親友、みっちこと三井がやって来た。
必死に走って登校してきたんだろう、彼の額には大粒の光る汗が浮かんでいた。
「なあみっち聞いてくれよ、陽斗のやつ、巫女メットと一緒に登校してライン交換したんだぜ」
「ふうん。別にいいんじゃない?」
お、さすがはみっち。
「そうだよな」
オレは嬉しくなって、ついみっちの肩をつかむ。
「そもそも噂を信じるなら、梅のほうこそ用心したほうがいいんじゃないか?」
みっちが、ナイキのスニーカーを下駄箱に入れながらいう。
「え?」
「巫女メットの機嫌を損ねると祟りが起きるんなら、陽斗は彼女と仲良くしてるんだし、無論問題はないだろ」
靴を入れたみっちが急に目を細め、おどろおどろしくいう。
「むしろそうやって陰で悪口いってる梅のほうに祟りが起きるんじゃないのか?」
「うっ……」
オレもそう思う。
みっちの意見に一票投じる。
てゆうか、そもそも祟りなんかあるわけないし。
少し、仕返ししてやろうとオレはみっちに加勢する。
つい調子に乗って両手を垂らしながら梅本にいった。
「梅ちゃんスイスに行くんだろ。飛行機に乗るんだろ。なら神宮寺さんの悪口いってる場合じゃないんじゃないのか」
「――っ」
あ……。
冗談でいったつもりだが、梅ちゃんの顔が予想以上に真っ青になる。
……なんか、ごめん。
ヘンな空気が流れた瞬間、
「さあ、チャイムが鳴る前に急ごう」
三バカの調整役みっちが舵を取ってくれた。
「あ、うん」
オレはうなずく。
「……おう」
梅ちゃんが鼻をすする。
「言い過ぎた、ごめんよ」
少し元気のない梅ちゃんの肩を叩くと、オレたち三人は廊下を走って二年三組の教室へと急ぐ。
階段を駆けるその最中、オレは実は神宮寺さんのことで頭がいっぱいだった。
細かいことだけど、一緒に校門をくぐると、なぜか彼女は「ごめん先行くね!」と、オレを置いて先に校舎に走って行ったんだ。
あれは、どういうことだったんだろう。
まさか、今度こそ神宮寺さんを怒らせてしまったのか?
あれだけ、みんながいる前で恥ずかしい思いをさせないって、固く誓ったのに。
なのに、バカなオレのせいで……。
みんなが見てる前で、オレと登校したのが恥ずかしかったのかな。
せめて校門前で別れて、別々に下駄箱まで行っていればよかったかな。
オレ……気遣いできてないよな。
ああ、しまったな。
夏合宿の打ち合わせをしたいからって、半ば強引にラインを訊いたのも悪かったかな。
いいや、絶対にそうだ。
階段を駆け上がりながらオレは頭を抱える。
ああ、やっぱりダメだ。
神宮寺さんを前にすると、緊張してどうも調子が狂ってしまうんだ。
昨日に続いてオレ……相当やらかしてしまっているよなぁ。
最悪だよ。
たくさんの生徒が行き交う中、堂々と登校なんかしたら、みんなに注目されるに決まってるだろ。
そんなこと、少し考えたらわかるだろ……。
バカだなオレ。
梅ちゃんとみっちの背中を追いかけながら、オレは後悔する。
でも。
でも、今日は学校まで、はじめて神宮寺さんと登校したんだ。
学校に着くまでの間、緊張したけど少しだけ会話もできたし。
興味深かったのは、神宮寺さんがユーチューブを観るのが好きだったってこと。
しかも、オレの恩人であるオーランドさんが推しのユーチューバーなんだとか。
なんか意外だったな。
オレは、神宮寺さんのことを少しだけ知れた気がして嬉しかった。
そう、一学期が終わる直前でやっと二人きりの時間を持てたんだ。
その点は良かったよ。
オレは考えを改めた。
一歩前進だもんな。
かなり迷ったけど、あそこで勇気を出して神宮寺さんに声をかけてよかったんだ。
もしも、もしも彼女が了解してくれなかったら……そう思うと、怖かったけど。
でも、神宮寺さんは優しいから、オレを気遣って一緒に登校してくれたんだ。
なんか緊張して、会話は弾まなかったけど……よくやったよ、オレ。
でもどうして彼女といると、ガチガチになるんだろう。
心臓の音が自分で聞こえるぐらいドキドキするんだ。
はぁ。
やっぱり。
やっぱりオレ、神宮寺さんのことが――。
そう思ったところで、チャイムが鳴った。
「やべ」
「陽斗、竜ちゃん先生が扉前で仁王立ちだ」
「マジ?」
あと少しで教室に間に合うところで、担任の鈴木竜二先生が叫ぶのだ。
「こらー、三井、梅本、朝野! 終業式に遅刻なんかするんじゃない!」
「「「ごめんなさーい」」」