30歳まで✕✕だった私はどうやら魔法使いになったようです
誕生日
ワンルームのアパートの一室で、美加は1人テレビを見ていた。

テーブルの上には発泡酒とおつまみが数種類用意され、パジャマ姿の美加がテレビ画面に見入っている。

流れているのは恋愛ドラマの再放送で、美加がこれを見るのはもう3度目だった。
「うぅ……このシーン何度見ても泣ける」

ティッシュを乱暴に掴んで目頭に当て、ついでに同じティッシュで鼻をかむ。

メガネの奥の目は真っ赤に充血していて明日の仕事のときに指摘されそうなんのだけれど、本人はそんなことおかまいなしにつまみに手を伸ばしている。

パリパリと小気味いい粗食音を立てておせんべいを食べながら、ふと自分と不遇の主人公を重ね合わせる。

主人公は25歳という若さで政略結婚させられて、相手の家で色々な苦労をする。
それでも前向きに頑張る主人公の姿に夫である男が徐々に味方になっていく。

というストーリーだ。
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