30歳まで✕✕だった私はどうやら魔法使いになったようです
☆☆☆

今、美加は電車の中で大翔と隣り合って座っている。
帰宅ラッシュが過ぎた電車内は比較的席もすいていて、息苦しいこともなく進んでいく。

「羽川さんも同じ方面の人だったんだね」
「そうですね。今日始めて知りましたけど」

「僕も」
そう言って視線を合わせて互いに小さく笑う。

なにげない会話なのに美加の心臓はドキドキしっぱなしだ。
美加は何度も窓ガラスを鏡代わりにして自分の顔を確認した。

今の所真っ赤になったりはしていないし、自然な様子でいることができていると思う。
「稲尾さんは普段どんなことをしてるんですか?」

電車の揺れに体を任せながら、美加は会話を続ける。
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