30歳まで✕✕だった私はどうやら魔法使いになったようです
心配するふりをしながら女に声をかける。
幸い足首をひねったりはしていないようだけれど、派手にこけたことで顔が真っ赤に染まっている。

「な、なんでもないわよ!」

心配してかけつけた美加へ向けてそう叫ぶと、壊れたヒールを握りしめて営業部へと戻って行ってしまったのだった。

その様子を美加と大翔はその場で見送る。
と、そのとき昼休憩を告げるチャイムがなり始めた。

絶好のタイミングだ!
美加は小躍りしてしまいそうになる気持ちをグッと抑え込んで、大翔を見上げた。

「あ、あの……良ければ今日は外で食べませんか? この近くにおすすめのパスタ屋さんがあるんです」
美加は緊張する声でそう言ったのだった。
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