30歳まで✕✕だった私はどうやら魔法使いになったようです
まだ顔が真っ赤なままの美加は「あのここで医務員さんが戻ってくるのを待ってるので大丈夫です。稲尾さんは仕事に戻ってください」と、伝えた。

けれど当の大翔は全く聞いていない。
なにかすぐに使えるものはないか、勝手に戸棚を調べはじめている。

その姿を見ていると、また美加の心臓がドクドクと音を立て始めた。

今まではエレベーターで一緒になったことはあるけれど、医務室でふたりきりというのは初めてだ。

ちょっとどくとくの閉鎖空間。

消毒液の匂いとか、清潔過ぎる床とか、眩しい蛍光灯とか、そのすべてが美加の緊張を掻き立てる。

更に今美加が座っているのはベッドの上なのだ。
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