30歳まで✕✕だった私はどうやら魔法使いになったようです
麻子は持ってきたケシゴムやペンをベンチの周りに置いて、美加と並んで座った。
「じゃ、ここから先は私を稲尾さんだと思ってね」

そう言ったかと思うと突然美加の肩を抱いてきた。
驚いて突き放してしまいそうになるのをグッと我慢して麻子を見る。

麻子はすっかりなりきっているようで、目を細めて「美加……」と、ささやきかけてくる。
これを大翔本人にやられたらドキドキするだろうけれど、どう見ても相手は麻子だ。

ドキドキするどころか面白くて笑ってしまった。
「ちょっと真面目にやってよ。力が暴走しないとどうしようもないんだから」

「そ、そんなこと言われたって」
クスクスと笑いながら美加は答える。
< 205 / 237 >

この作品をシェア

pagetop