30歳まで✕✕だった私はどうやら魔法使いになったようです
こんなんじゃとても練習にはならない。
やっぱり本人じゃないと……と、思ったときだった。

チンッとエレベーターが到着する音が聞こえて視線を向けると、大翔が下りてきたのだ。
大翔はベンチに座る美加を見て少し驚いた顔を浮かべたが、すぐに微笑んで軽く目配せをしてきた。

一応、社内では付き合っていることを秘密にしている。
知っているのは麻子と、大翔の信用している上司くらいだった。

軽い目配せに美加の胸がキュンッと高鳴る。
秘密の恋をしているようで胸がドキドキする。

だけどそれだけじゃ地面に置かれている文房具たちが反応することはなかった。
やっぱり、極限の緊張を感じないとなにも起こらないみたいだ。
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