30歳まで✕✕だった私はどうやら魔法使いになったようです
事務の二人組が大翔を見つけて「あ、稲尾さんもいたんですかぁ?」と、近づいて行ったのだ。
美加と麻子はハッとして注目する。

ふたりは大翔を挟むようにして立ち、自分たちの缶ジュースを飲み始めた。
「奇遇ですね! 私達もここで休憩しようと思って」

「屋上って人がいなくて気分転換にいいんですよねぇ」
なんて言っているけれど、明らかに大翔を見つけたからついてきたのだろう。

大翔は少し困り顔になって相槌を打っている。
「事務にもライバルが……」

美加は小さくつぶやいた。
あの3人衆ばかりに気をとられていたけれど、大翔は会社全体で人気者だ。

うかうかしていたら誰かにとられてしまうかもしれない。
そんな焦りが美加の胸に膨らんできたのだった。
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