30歳まで✕✕だった私はどうやら魔法使いになったようです
膝の上でグッと拳を握りしめているその姿に大翔がふっと息をもらす。
「そんなに無理して急ぐ必要はないよ」

美加の握りしめた拳をそっと包み込んで言う。
その言葉にハッとして美加は顔をあげた。

大翔の優しい笑顔を見るとなんだかすごく恥ずかしい気持ちになる。
もしかしてがっついているように見えただろうか。

この前なにもできなかったから、30歳で処女だから焦っているとか。
焦っているけれど、決してそういう意味で焦っているわけじゃない。

ただ、大翔が誰かにとられるのではないかと思って怖いだけだ。
だけどそれを言えば大翔は美加を安心させてくれるだろう。

安心すれば、また大翔を待たせてしまう。
その間に近づいてくる子はきっといる。

美加は奥歯を噛み締めた。
「無理なんてしてません。私は行きたいんです」

美加はそういい切ったのだった。
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