30歳まで✕✕だった私はどうやら魔法使いになったようです
「稲尾さんはきっと休憩時間にそれを食べる。チョコレートと一緒に飲むものと言えば?」

「えっと、ホットミルク?」
コーヒーや紅茶という手もあるけれど、私はそれが一番好きだ。

最後のひとかけらをミルクに入れて溶かして飲むとおいしい。

その味を思い出して頬が溶けてしまいそうになったとき、麻子が目の前で手を叩いて現実に戻ってきた。

「まぁ、飲み物はなんでもいっか」
「なんでもいいの?」

てっきりなにか理由があると思っていたから、拍子抜けだ。
「でもたぶん、自販機で買った飲み物じゃないと思うんだよね」

この会社の自販機に置いてあるのはお茶と水と、エナジードリンクだけだ。
とてもチョコレートと相性がいいとは思えない。
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